第54章 六破羅と梵(ブラフマン)
「当たり前だよ。どんなに酷い目に遭わされても逃げるなんて選択肢は最初からない。ずっと傍にいるって約束したの」
「……………」
「それに私の大切な人が『助けて』って言ったの。なら私のやるべき事は一つ。絶対にマイキーくんを助けて孤独から救い出す!」
意志の強い真っ直ぐな眼を向けられ、千冬は驚いた顔を浮かべる。
「こんな理由じゃ駄目かなぁ?」
へらっと困った顔で笑うカノトに千冬は先程の質問など意味がなかったことを知る。
「いや…当たり前のこと聞いたオレが悪かった。そうだよな、どんなマイキー君でもオマエは好きなんだもんな」
「千冬くん…」
「マイキー君に拒絶されても絶対に諦めんなよカノ。絶対に心だけは折られるな。オマエの存在は必ずあの人を救うきっかけになる」
「うん!有難う千冬くん!」
千冬に背中を押されたカノトはその心遣いに感謝し、笑顔で返した。
◇◆◇
「マイキー君をぶっ飛ばすにはどうしたらいいかな?」
「は?」
放課後、三人で帰ろうと階段を下りていれば、突然タケミチがそんなことを言い出した。
「突拍子もない事言い出すよなぁ、オマエは」
「急に物騒なこと言われるとビックリするよ」
「オレは真剣だよ!二人とも!」
「まぁでも…まずは仲間集めだな!」
「仲間集め…?」
「だってもう東京卍會はないワケだし」
「そうだね。マイキーくんの"関東卍會"に対抗できる戦力は必要になる」
「…なるほど」
「なになにー!?」
「!」
「何楽しそーな事話してんだよ。仲間?」
そこに途中から三人の会話を聞いていた八戒が現れた。
「八戒…。いや…なんでもねぇよ」
「(八戒くんには事情話せないしね…)」
「つかオマエらどーせヒマしてんだろ?ついてこいよ!寄りたいトコあんだよ」
「ヒマじゃないけど」
「着いて行こうよ。彼の寄りたいトコも気になるし、もしかすると意外な巡り合わせがあるかも知れないよ」
「意外な巡り合わせねぇ…」
「そんな気がするんだ」
とりあえず三人は八戒に着いて行く事にした。そして辿り着いた場所を見て、カノトとタケミチはすぐに後悔した。
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