第54章 六破羅と梵(ブラフマン)
「(今日も荒れてるなー。)」
「あーあ…高校に入ればモテると思ったのに。お前の存在なんて霞んで見えちまうくらい女子達の視線を独り占めして、毎日幸せな高校生活が送れると思ったのにとんだ誤算だよ…!!」
「それは残念だったね」
「それもこれも全部お前が悪いんだ!無駄にイケメン要素ばら撒きやがって!!」
「ゴメンね、顔が良くて」
「やかましいわ!!」
鋭いツッコミを入れる友人の姿を見たカノトは、中学の頃から何も変わらない関係性に懐かしさと嬉しさを感じ、思わず笑みを零す。
「何笑ってんだこの万年勝ち組野郎…!」
「まぁまぁ落ち着いてよ。それより、期末の勉強はどう?ちゃんと予習してる?」
「……………。」
期末テストの話題に変えた途端、さっきまで怒って騒がしかった陽翔が急に黙り込み、どんよりオーラを漂わせた。
「…聞かなければ良かったね」
「俺…ダメかも知れねぇ」
「そんなに酷いの?」
「高校上がってから授業の内容が難しくなるし、この間の小テストだって合格点ギリギリでお袋にこっぴどく叱られたんだ…」
「それは災難だったね。もし良かったら勉強教えようか?」
「マジで!?すげー助かる!!」
陽翔は涙ぐんだ顔でお礼を言う。
「上手く教えられなかったらごめんだけど」
「そんなことねーって!お前って中学の頃から人に勉強教えんの上手かったじゃん!頼りにしてるぜ宮村!」
こうして陽翔に勉強を教えることになった。そして教室に入ると窓側の一番前の席に座っている女子生徒を見つけ、カノトは挨拶を交わした。
「おはよう、委員長」
「おはよう宮村。でももう委員長じゃないわ」
「そうだった、ずっと委員長って呼んでたからつい癖で…。君には『都築沙羅』って云う綺麗な名前があるのにね」
「……………」
「?どうかした?」
「何でもないわ。相変わらず天然タラシだと思っただけだから気にしないで」
「(て、天然タラシ…?)」
何故か沙羅に溜息を吐かれた。
「なぁお前らさ!入学祝いって何貰った?」
鞄を置いて二人の元にやって来た陽翔がワクワクした顔で唐突に聞いてきた。
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