第53章 貴方を助けるために
ザワつく通行人の異変に気付いた三途が屋上を見上げると…
「マイキー!!?」
今まさに自分の主君が飛び降りようとしていた。
『どうだ?マンジロー、頂点の眺めは』
『いい感じ?』
『みんなを守ってくれたんだよな!?』
『わかってるぜマイキー!!』
真一郎やエマ、場地やドラケンの顔が浮かび、マイキーは口許に小さな笑みを見せる。
「いくぞオマエら!!!!」
そう叫んだマイキーはニッと笑った後、地を蹴って身を投げた。
「やめろマイキー!!」
三途が驚いた顔で叫ぶ。マイキー自身もこれで終わらせられると思った時…。
ガシッ
下の階にいたカノが両手でしっかりとマイキーの手首を掴み、落下を防いだ。
「絶対に死なせない!!」
撃たれた左肩の痛みを我慢し、脇腹と足の痛みも堪え、死のうとする恋人の命を救ったカノの行動にマイキーは驚いて目を見開いた。
「っ…………」
腕力だけでマイキーの体を支えているため、両手がプルプルと震えている。
「(今にも意識が飛びそう…)」
それでもカノは離さないようにしっかりと両手で掴む。
「早く!!私の手を掴んで!!このままだと二人とも落ちちゃう!!」
「………、バカな事を。オマエはオレのせいで死ぬんだぞ?なのに…」
「万次郎くん、もう…時間がないんです。意識が飛びそうで…腕の力も入らなくなってきてる…」
撃たれた左肩の血はまだ止まらず、腕に纏わりつくように流れていた。
「…何でオレを助けた?オレはオマエを殺そうとしたんだぞ。現に今だって死にそうな顔してる」
「それも分からないほど深い処まで落ちちゃったんですか…?私が貴方を助ける理由なんて知ってるくせに」
「……………」
「勝手に死なないでくださいよ…っ」
涙で濡れた顔で怒った声で言う。
「…手を離せ。もう全部終わらしたいんだ」
「…ホラ、後悔してる」
「……………」
腕から流れる血がポタポタとマイキーの顔に落ちる。
「万次郎くん、早く…」
「……………」
「お願い…掴んで…」
「その状態でこれ以上オレを支えんのは無理だろ。死にたくねぇなら手を離せばいい」
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