第53章 貴方を助けるために
「絶対に離さない…っ」
「離せって言ってんだろ」
「離さないって言ってるでしょ!!」
手首を掴む自分の手が血で滑り、マイキーの体が少し落ちる。
「会いたくなかった。こんな結果にしたくなかった。気がついたらオマエを撃ってた。…頼むから…オレを…もう楽にさせてくれ…」
「うるっっっさい!!!!」
涙を浮かべて怒りで叫ぶ。キレたカノを見たマイキーは驚いて目を見開いた。
「貴方はいつもそうだ!!何でもかんでも一人で背負い込んで!!私との未来を犠牲にしてまで私の幸せを守ろうとする!!私の気持ちも全然考えずに…!!」
「っ…………」
「万次郎くんの馬鹿!!兄さんのいる世界で幸せになっても万次郎くんがいないんじゃ意味なんてない!!」
「でもオマエは兄貴のいる世界を望んで…」
「万次郎くんのいる世界も望んでるの!!やっと未来が変わって今度こそ二人で幸せになれると思ってたんだよ!?」
「……………」
「傍にいなくてもひとりで大丈夫なんて嘘ばかり!!万次郎くんは私がいないとダメなくせに!!自分から離れて行かないでよ…!!」
「…オレは」
「どんなに冷たくあしらったって!!どんなに酷い言葉で傷付けたって無駄なんだから!!私は万次郎くんがいいの!!恋をした日からずっと、私は万次郎くんだけが大好きなんだよ…!!」
「っ…………」
「お願い万次郎くん!!一度でいいから!!"助けて"って言って──ッッ!!!」
ズルッと手が滑る。
「貴方を絶ッ対に助けます!!」
痛みを堪えて笑えば、マイキーはぶわっと涙を溢れさせた。
「助けてくれ、カノ」
縋るように助けを求めるマイキーとガシッと握手をした瞬間…。
チリンー…
「え?」
鈴の音が聞こえ、意識が途切れた。
◇◆◇
「カノ〜?まだ寝てんのかー?」
ドアを控えめにノックするマドカの声で涙を流しながらハッと目を覚ます。
「朝食の準備出来てるから着替えたら来いよー」
「(え?)」
混乱する頭で壁に掛けられたカレンダーを見る。
日付は2008年───6月。
カノは高校二年生になっていた。
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