第53章 貴方を助けるために
素直にマイキーの命令を聞いた三途は、突き付けていた拳銃を下ろし、外に出て行った。
「「……………」」
数秒の沈黙が二人の間に流れる。
「万次郎くん…声、元気ないですね。あの頃みたいな明るい声が聞きたいです」
「……………」
「12年前に書いた手紙を覚えていますか?あの手紙の最後に私のことを書いてくれてたでしょう?」
「……………」
「すごく恥ずかしかったけどすごく嬉しかったです。万次郎くんが本当に私との将来の事を考えてくれてるのが分かるなって」
「……………」
「私も万次郎くんのこと、一生かけて愛すつもりです。貴方を幸せにできるのは私だけです。万次郎くんの愛に負けないくらい、私ももっとたくさんの愛を貴方に注ぎます」
そしてあの言葉をカノも今のマイキーに伝える。
「愛してますよ」
「……………」
「貴方のおかげで私の人生は大きく変わった。知らなかった世界を知ることができた。万次郎くんが私のことを大切にしてくれて、いつでも私を守ってくれたから今の私がいるんです」
「……………」
「だから今度は私が!!」
カノはスッと立ち上がる。
「貴方を救う番!!」
振り返った瞬間、ドンッと左肩に強い衝撃が走り、驚いてマイキーを見ると硝煙が上がった銃をカノに向けて構えていた。
「え?」
脳が左肩を撃たれたと認識するよりも前に、二発目の銃弾が発砲され、脇腹を貫通する。
「っ────!!!」
ドサッと地面に倒れ込んだところを立ち上がったマイキーに足を撃たれた。
「会いたくなかった…こうするしかなくなるから」
「う…あ"ぁ"…ッ」
「電話もメールも正直迷惑だった」
「はッ…はぁ…っ…ぐ、ぅ…ッ」
脳が完全に"撃たれた事"を理解すると、全身に言葉にならない程の激痛が襲い、カノは苦痛で顔を歪める。
「(痛い…痛い…っ)」
撃たれた箇所からドクドクと血が流れ、地面に血溜まりが広がる。
「もうオレに関わるな」
冷たい声で突き放し、背中を向け、歩き出そうとする。
「まん…じろ…く、ん」
消えそうな声で名前を呼ぶと、マイキーは無意識にピタリと足を止める。
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