第53章 貴方を助けるために
「無防備な奴に急に銃を突き付けるなんて一体何のつもり?不躾にも程があるよ」
「生意気な態度も相変わらずだなぁ?でもどっちが優位に立ってンのか理解しろよ。テメェの言葉一つで命が消えンぞ」
脅しとも取れる言葉を吐き、銃口を強く米神に押し当てられる。
「……………」
危機的状況に陥っている中、相手の男に怯む事なく、カノは横目で口の端に傷のある男を睨み付ける。
「君は誰…」
「しー…!!」
男は口許に人差し指を添え、話を中断させる。その直後、後ろの方からペタンペタンと誰かが歩いてくる靴音が聞こえた。
「(誰が来る!?まさか仲間がいたの!?)」
カノの緊張が一気に高まる。
「(やっぱり一人で乗り込むのは無謀だった?タケミチくんの到着を待てば良かった?)」
冷静を装ったつもりでいても、恐怖と緊張で呼吸が浅くなり始める。横にいる男に気付かれないように震える手を必死に抑え込んだ。
「よく聞け、首領からのお言葉だ」
「!」
「いい未来だろ?」
懐かしい声が耳に届いた瞬間、まるで魔法に掛かったように恐怖感と緊張感が消え去り、代わりに熱いものが目頭に浮かぶ。
「これ以上何を求める?」
「…万次郎くん」
やっぱり貴方はすごい
さっきまで苦しかった呼吸も
震えていた手も
貴方の言葉を聞いただけで
不思議と治まってしまった
「万次郎くん、ずっと会いたかった…っ」
「……………」
嬉しくて涙ぐんだ顔で笑みを浮かべる。けれど感動の再会だと言うのに、マイキーの眼は光を無くし、無表情を貫いたまま、何も言葉を返さない。
「電話もメールもしたのに全然返事をくれないからずっと心配してたんですよ。でもこうして会えて本当に良かった」
「……………」
「万次郎くん。12年前に約束してくれた通り、兄さんも…みんな幸せそうです。幸せそうじゃないのは貴方だけ」
「殺すぞテメェ」
カノの言葉が気に障ったのか、男は苛立ちを露わにして、グリッと米神に突き付けた拳銃を更に押し当てる。
「席を外してくれ三途。二人で話がしたい」
「………、うっす。下で待ってますよ」
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