第53章 貴方を助けるために
「いい加減にしろよテメェ!!」
「お願いします!!」
「梵天なんて知らねぇって言ってんだろ!!」
「でも……」
「とっとと失せろ!!」
苛立つ強面顔の男に肩を強く突き飛ばされ、後ろの壁に背中をぶつける。
「(絶対に知ってるはずなのに…)」
梵天のアジトを探すため、繋がりがありそうな店を片っ端から訪ねるが、梵天の存在を恐れているのか、誰も口を割ろうとしない。
Prrr…
「もしもし?」
《梵天のアジトを突き止めたぞカノちゃん!!》
「本当!?」
《一虎君からの情報で、宇田川ボール場ってトコが、昔は梵天のたまり場だったらしい。オレもすぐ向かうから一人で行くなよ!》
ブツッと通話が途切れ、すぐに宇田川ボール場に向かった。
「ここが…」
外観は酷い有様で、窓ガラスはほぼ割れており、如何にも梵天の連中がたまり場に使っていそうな感じだった。
「(待つように言われたけど…)」
『オレもすぐ向かうから一人で行くなよ!』
「(ごめんタケミチくん。)」
タケミチの到着を待たずに、カノは建物の中へと一人で足を踏み入れた。
「(うわ…中もボロボロ。硝子の破片が散らばってるし、椅子もめっちゃ汚れてる。)」
硝子の破片を踏むとパキッと音がなり、周囲を警戒しながら冷たい椅子に腰を下ろす。
『マイキーの事を調べんのはもうやめろ』
『君達は12年という歳月をナメています。佐野万次郎は君達の知っている人間じゃない!』
「(神様…お願いします。)」
『12年後のオレに絶対に近寄るな』
「(もう一度だけでいい。
愛する人に会わせて───。)」
微かな希望を抱いて祈った時、米神に固い物が押し当てられた。
「振り向いたら撃つ」
「え?」
何が起きたのか分からず、理解も出来なかった。ただ理解るのは、米神に突き付けられた物が"簡単に人を殺せる道具"だと言う事だけだった。
「よォ、クソ勇者。テメェは女のクセに昔っからウザくて気に入らねぇヤローだ」
「…私を勇者って呼ぶのやめろ。彼以外に許可した覚えはないよ」
「へーえ?銃突き付けられてンのに随分と冷静だな。普通の奴ならビビって震えンのに」
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