第53章 貴方を助けるために
───秋葉原。
「(…何が映ってるんだろう。自分で入れた記憶もないから怖いな。)」
懐かしいブラウン管テレビにビデオテープを読み込ませ、リモコンで再生する。
「(ホラー映画とかだったらヤダな…。)」
《よーし映ってんな。今から弟がハイキックでビンのフタを取りまーす。》
「!」
少しドキドキして待っていると、画面に映し出されたのは、ホラー映画ではなく、何処かの道場だった。
「あれ?この人、誰かに似てる…」
そしてそこには一人の青年が瓶を持ってカメラを回しており、青年の奥にはもう一人、道着を着た小さな子供が立っている。
《びびって動かすなよ!シンイチロー!!》
《バーカ、誰が4歳のガキにびびるかよ!》
「え!?子供の頃の万次郎くん!?」
《いくぞ。》
《バッチこーい。》
幼いマイキーは4歳とは思えない力で、瓶の蓋を回し蹴りで開けた。
《ウッソ!!一発!!!?》
「この人が真一郎さん。兄さんの親友だった人…」
…なんで私のところにこんなの入ってるの?
ピッ
《ふーふふーん、ふふーん。》
急に映像が切り替わり、今度は佐野家の食卓の様子が映し出される。鼻歌を歌いながら料理を作るエマの後ろ姿も映っていた。
《ん?》
「…エマちゃん」
《ちょっとマイキー何撮ってんのよ!!やめてよ!!恥ずかしいでしょ!!》
「(これ…佐野家のホームビデオ!?)」
ザァァッと画面が乱れ、再び映像が切り替わると…
「(万次郎くん!?)」
自分の部屋でカメラを回す過去のマイキーが映り、カノは驚いた表情を浮かべる。
《12年後のカノへ。》
「(このビデオ…万次郎くんが私宛てに入れたモノ!?)」
《手紙ではああ言ったけどオマエとタケミっちだけに伝えたい事がある。》
そう語り出すマイキーの表情はいつにも増して真剣味を帯びており、カノはこれから伝えるマイキーの話に緊張で生唾を呑む。
《オレには自分では制御できない"もう一人のオレ"みたいなものがある。》
「(もう一人の?)」
《"黒い衝動"》
「(衝動…!?あ…!!あれがそうだ…羽宮くんを殺した時。)」
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