第53章 貴方を助けるために
【…東卍を畳んだのはオマエのためだけじゃない。みんなのためだ。】
【オマエらが大人になる為に必要なモノは東卍(ココ)にはない。だからみんな…必要なモノを探す旅をしろ。】
【オレも必要なモノを探す旅に出る。もうオマエらと会う事はないかもしれない。でもわかってるだろ?】
【どんなに離れていても繋がってる。】
「離れてても繋がってる…」
「それが大人になるって事なのかもね…」
「必要なモノを探す旅か」
「オレらはその旅の途中っスね」
「オレ今日ここに来て良かった!モヤモヤしてたんすよマイキー君の事…急にいなくなっちゃったから」
八戒は顔を上げて夜空を仰ぐ。
「でも離れててもどっかできっとオレらの事想ってくれてる」
「ああ…そうだな。想い続けてれば繋がってるんだ」
「(万次郎くんを無理に捜すの…そんなに急がなくていいのかも。)」
「じゃあな」
「(みんなバラバラになっても心は一つ。)」
だけど…
「(会えなくても…声聞きたかったな。)」
ちょっぴり残念に思い、カノは数枚の写真と手紙を銀の箱に戻して持ち帰った。
◇◆◇
「ふぅ…さっぱりした」
「にゃー」
「遊ぶの少しだけ待ってねキャシー」
お風呂から上がるとキャシーが猫じゃらしを咥えて部屋で待っていた。カノはキャシーの頭を撫でた後、ベッドに座り、先程の銀の箱から写真と手紙を取り出す。
「覚えてるキャシー?マイキーくんだよ」
「にゃー?」
膝の上に乗ってきたキャシーにマイキーが写ってる写真を見せると不思議そうな顔をしている。
「流石にみんなの前であの手紙の内容は恥ずかしかったな…。万次郎くんが隠さない人だって知ってるけど…。でも…嬉しかった」
「にゃー」
「この箱どうしようか?残しておいても使い道ないだろうし捨てるしか…って、あれ?」
箱を持ち上げるとカタッと音がした。
「箱から音がする!?」
驚いて箱の中を調べてみると二重底になっている事に気づき、ひっくり返して底を取ってみた。
「何これ…?ビデオテープ?」
そこには自分が入れたモノではないビデオテープが一本入っていたのだった。
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