第53章 貴方を助けるために
「(夏祭りの時の写真だ。こっちは文化祭の時で…あ、温泉旅行に行った時のもある。どの写真の万次郎くんも笑顔だな…。)」
懐かし過ぎて思わず小さな笑みが零れる。そして手紙を開いて内容に目を通した。
「"12年後の私へ"…」
【万次郎くんを幸せにしてあげていますか?あの人の我儘は大人になった今でも健在ですか?たどり着いた未来ではきっと彼の溢れ過ぎるくらいの愛に包まれて、幸せな毎日を過ごしていると思います。】
【私はもうすぐ現代(みらい)に帰ってしまうけれど、叶う事なら本当はずっと、万次郎くんの傍にいたい。同じ時代を生きたい。でも彼が未来でも私を幸せにすると約束してくれたので、会えなくなるのは寂しいけど、その日を楽しみに向こうで待っていようと思う。】
【それと未来を大事な人と一緒に歩むなら、彼が悪い方に行かないようにちゃんと手を繋いでてあげて。あの人が独りぼっちにならないように、迷子にならないように、ちゃんと『帰る場所』で待っててあげて。】
【それでももし、帰り道が分からなくなってしまったら…貴女が光のある場所に導いてあげてほしいの。今までいろんな事があったけど…今度こそ二人で幸せになってね。】
そう───綺麗な字で終わっていた。
「(自分の将来より、万次郎くんの心配ばかり。どんだけ好きなんだろう。)」
みんながそれぞれ未来の自分に宛てた手紙を読むと、最後にドラケンが言った。
「…さて、本人は来てねぇけど見てくだろ?アイツの手紙。」
「マイキー君の手紙…」
「本人も来ねぇ事だし開けてみようや」
「タケミチくん代表して読んで」
「え、オレ!?」
手紙を託されたタケミチは少し緊張しながら中身を確認する。カノも真剣な表情でタケミチが読むのを待つ。
「(知りたい。万次郎くんが手紙に綴った想いを。もしかしたら今いる場所の手掛かりがあるかもしれない。)」
「"未来のオレへ 佐野万次郎"」
【12年後か…オレ何やってんだろ?想像もつかないな。あ!でも!ぜってーカノと結婚して幸せな毎日を過ごしてる!】
「!」
まさかとっ始めに自分の話題が出るとは思わず、カノは驚いて目を見開く。"惚気けやがって…"と誰かが呟いた。
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