第53章 貴方を助けるために
6月19日───。
「結局もう2ヶ月半…何の手掛かりもない」
マイキーを捜すと意気込んだものの、梵天メンバーの情報すら掴む事が出来ず、溜息が零れる。
「(でも諦めるのはまだ早い。地道に捜し続ければ何かしらの成果は得られるはず。)」
「カノちゃん、今日の夜って暇?もし予定なかったら久しぶりにご飯でもどう?」
同じ看護師である同僚に食事に誘われるも、カノは申し訳なさそうに断る。
「せっかくの誘いだけどごめん。今日は大事な用事があるの。また今度誘って。」
「そっかー。あ、大事な用って彼氏とか?カノちゃんってモテるもんね♪」
「そんなんじゃないよ。でも今日はずっと昔から約束してた"思い出"を開ける日なんだ」
「?」
「(彼は…来てくれるだろうか。)」
そして17時過ぎに仕事を終え、一旦家に帰ってから私服に着替えて武蔵神社へと向かう。
「(一応、知らせておこうかな。)」
携帯を出してマイキーにメールを打つ。
「("今日は約束の日です。12年前にみんなで埋めたタイムカプセルを一緒に開けませんか?待ってます。")」
返信が来ないと分かっていても送ってしまう。今度こそ彼から返事が来るのではないかと無意味な期待を抱いて…。
◇◆◇
夜になっても
結局万次郎くんは
来なかった
「しょうがねぇよ、もう開けちまおうぜ」
「……………」
落ち込むカノを見たドラケンは、慰めるように頭をポンポンッと優しく叩いた。
「薄情なもんだよなあ。10年も音沙汰なし。
今日の事も忘れちまうなんてよー」
「早く開けてみてよー。
オレも何が入ってるか見てぇし」
「何入れたっけなぁー。
覚えてる?タカちゃん。」
「全っ然記憶にねぇ」
シャベルで土を掘り起こすと、12年前に埋めたタイムカプセルが出てきた。
「ほら、カノちゃんの。」
「うん」
自分の名前が書かれた箱をタケミチから受け取り、蓋を開ける。
「色褪せてなくて良かった」
カノが手紙と共に入れたのは数枚の写真だった。そこはマイキーと出掛けた場所で、二人は楽しそうな顔で写真に写っている。
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