第53章 貴方を助けるために
「佐野万次郎なんて元々知り合いでも無かった奴の事なんてどうでもいいでしょう?未来へ進んでください!!!」
「ナオト、あの人がいなかったら今のオレはいねぇんだよ」
唇を結び、涙ぐむタケミチ。
「私ね、彼とたくさんの約束をしてるの。その約束の一つにね、私と一緒に未来で幸せになるっていう約束があるんだ」
「!」
「私の未来には万次郎くんが必要なの。あの人がいない世界なんて堪えられない。私にとって世界で一番大切な存在になっちゃったから」
「カノさん…」
「それに絶対に万次郎くんを独りにさせないって決めてるの」
カノはニコリと微笑む。
「頼むよ…すぐ戻ってくるから…」
「……………」
「お願い、直人くん」
二人の強い覚悟を真正面から受けた直人は最後まで悩んだが結局折れてしまう。
「…もう!すぐですよ!?」
「ありがとう!ナオト!!」
「直人くんありがとう!!」
「まったく…君達には負けますよ」
そして直人はタケミチと握手を交わす。
しかし───……
「あれ?握手したのにタイムリープしない!?」
「鈴の音も聞こえなかった…」
「…なんで!?」
「いつもなら二人が握手すると過去に戻ったのに今回はどうして…」
驚く二人を他所に直人が考え込む。
「………、なるほど…」
「え…!?どういう事だよナオト?」
「タケミチ君、カノさん。ボクはもうこの現代(みらい)をもう変えたいと思っていない。つまりもう"トリガー"としての役目を終えた」
「え?」
「あくまで仮説ですが、過去を変えたいと強く思ってないとトリガーとして機能しないのかも…」
「そんな…」
「どうしたら…」
唯一の頼みである直人のトリガーとしての能力は目的を達成したことで機能を失い、タイムリープするキッカケが途絶えてしまった。
「(そもそもどうして万次郎くんは悪い方に行っちゃったんだろう?闇堕ちするキッカケは思いつかないし…)」
でも……
過去に戻れないなら
現代(ココ)で捜し続けるしかない
どんなに時間が掛かっても
「(私が必ず貴方を見つけ出す。)」
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