第53章 貴方を助けるために
「ひっく…うぅ…」
ポロポロと涙が溢れ出し、両手で顔を覆う。嗚咽声をつまらせて泣くカノに驚いた二人は慌て始め、戸惑った顔を見合わせる。
「カノちゃん…」
タケミチが気遣うように優しく背中を擦る。
「ナオト、その情報は確かなのか?本当にマイキー君は犯罪組織なんかに…」
「…ボクの情報が間違ってると?根拠は?」
ベンチから立ち上がった直人はタケミチを見る。
「…わかんないよ。でも…そんなワケねぇ」
続いてタケミチも立ち上がる。
「マイキー君に会わないと…っ!!」
「…万次郎…くんに…?」
「カノちゃん!」
こちらを向いたタケミチが手を差し出す。一瞬意味が分からず、涙で濡れた顔でタケミチを見上げる。
「悲しむ暇があるならもう一度マイキー君に会いに行こう!」
「……………」
虚ろな眼でタケミチの手を見つめる。
「新たな旅に出ようぜ勇者様!」
「(もう一度頑張れば…万次郎くんにまた会えるの?)」
覇気のなかった虚ろな眼は、一つの希望を見つけたことで光が戻り始め、カノはその手を取り、立ち上がった。
「うん…!」
いつものカノに戻ったことで安心したタケミチは歯を見せてニッと笑う。
「待ってください二人とも!それがどんなキケンな事かわかってるんですか!?」
まさかの展開に驚きを隠せない直人はタケミチの肩を掴む。
「君達は12年という歳月をナメてます。佐野万次郎は君達の知っている人間じゃない!」
バッ
「握手してくれ!」
「!」
「過去に戻る!」
直人の話を無視して、手を差し出す。
「な…何言ってるんですか?」
「過去でマイキー君に会うから。本心が聞きたい」
「私も彼の本心が知りたい。会ってちゃんと話がしたい。彼がまだ…私との約束を覚えているかどうか確かめたいの」
「いい加減にしてください!!もう姉さんもカノさんのお兄さんも助かった!!目的は達成したんです!!!」
どうにかして二人に思い直してもらおうと必死に訴えかける直人だが、カノとタケミチの意志の強い瞳は揺るがない。
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