第53章 貴方を助けるために
とある場所にて───。
「んんー!!」
「ん"んん…」
「あ───むっ」
口の端に傷がある男は違法とされるカプセル型の薬を呑み込み、イカれたように叫んだ。
「裏切り者に梵天の鉄槌を!!」
その側には縄で体を縛られた三人の男が横並びに膝立ちしており、口元は喋れないようにタオルを噛まされている。
「んん!」
「ん!」
「しっしっしー!!聞け!
"マイキー"からのお言葉だ」
男が人差し指を口許に当て、恐怖で涙を浮かべている裏切り者達を黙らせると、たい焼きを頬張っていたマイキーが何の感情も宿ってない無機質な声で命令を下す。
「殺せ」
「うっす」
男は命令を実行するために持っていた拳銃を裏切り者達の背後から構え、三発の銃弾を後頭部に撃ち込んだ。
「梵天の歯車に噛み合わねぇ奴は死体(スクラップ)だろ!」
そう愉しげに声を弾ませて狂気的な笑みを浮かべるピンク髪の男の名は"梵天"ナンバー2───三途春千代。彼はマイキー以外は全て敵と豪語する程の危険人物であった。
「死体シッカリ掃除しとけよ」
「凍らして砕いて魚のエサだ」
「忘れんなよ?テメェら。裏切ったらオレらでも同じ死体(スクラップ)!それが梵天だ。」
Prrr…
その時、マイキーの携帯が鳴った。片手でたい焼きを持ちながら、もう片方の手で画面に表示された名前を確認する。
「……………」
以前から何度も掛かってくる番号。でも一度も出たことはない。無言で表示された相手の名前を凝視めた後、躊躇う事なく、電話を切った。
◇◆◇
「マイキー君が犯罪組織のトップ!?」
「はい、間違いありません」
「(万次郎くんが…あの白髪の男?)」
『東卍は今日で解散する!!』
『"未来を変える為"の一番良い方法を思いついた』
「(そう言って大好きな東卍を終わらせた万次郎くんが?)」
『12年後、また逢う日まで、東卍のみんなもマドカさんもオレが絶対に守ってみせる。絶対に…』
『オマエの幸せが壊されねぇように、オマエが12年後も安心して笑って過ごせるように、オレはオマエの未来を守り続けるよ』
「っ…………」
「カノちゃん!?」
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