第53章 貴方を助けるために
「…マイキーくん、どこにいるのかな」
「!」
「私を残して死んだり、してないよね…?」
綺麗な紫色の瞳は覇気を無くしたかのように虚ろな眼を宿し、呟かれた言葉は悲しみで少し震えていた。
「しっかりしろよカノちゃん!」
「タケミチくん…?」
「あのマイキー君が簡単に死ぬと思うか?最強の不良で"無敵のマイキー"だぞ?オマエだってマイキー君の強さは知ってんだろ?」
「でも…連絡、ないんだもん」
「きっと何か理由があるんだ!だからオレらに会えないんだよ!そうじゃなきゃマイキー君がオマエを置いてどっか行くかよ!」
「……………」
「だから元気出せよカノちゃん!オマエがいなきゃ生きていけねぇような人だぞ!絶対に生きてる!だから諦めんな…!」
「ありがとう…タケミチくん」
落ち込むカノを何とかして元気づけようと精一杯の言葉で励ますタケミチ。そんな彼の優しさに少しだけ心が軽くなり、隈をうっすら残した顔で小さく笑う。
そして数分後、スーツ姿の直人が現れ、タケミチの隣に腰を下ろす。
「…悪いなナオト…」
「いえ…君は恩人です。これぐらいの事…」
直人は一枚の封筒をベンチに置く。それを受け取り中身を確認すると【梵天に関する報告書】と書かれた資料だった。
「調べましたよ"梵天"という犯罪組織の事、そして"白髪の男"」
「(犯罪組織…)」
「日本最大の犯罪組織"梵天"。賭博・詐欺・売春・殺人、どんな犯罪も裏には梵天がいると言われていますが、警察でもその内情を把握できてない」
「なんだか…前の"東京卍會"みたいだね」
「カノさんの言う通りです。そしてその頭(トップ)が"白髪の男"」
「黒川…イザナ?」
「いえ…黒川イザナはやはり死んでいました」
「ならあの男は誰なの?」
そう聞くと、直人の視線がカノに向けられ、どこか気まずそうな顔で言い淀む。
「直人くん?」
「"白髪の男"は通称"無敵のマイキー"」
「え!?」
「梵天のトップは佐野万次郎です」
ドクンッ
「─────」
目を見開いたまま、カノの顔が凍り付いた。
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