第53章 貴方を助けるために
「あとそれと…ニュース映像に"黒川イザナ"みたいな奴が映ってました。ひょっとして…イザナは生きていてマイキーくんを…」
不安と恐怖が同時に襲いかかり、カノの目に涙が浮かぶ。
「…ドラケンくん、本当のことを教えてください。万次郎くんは生きてるんですかっ!?」
「…オマエが傷付くと嫌だから黙ってた。今みたいに青ざめた顔で泣きそうになるから。でも…オマエは知りたいんだよな」
観念したようにドラケンは溜息を洩らす。
「…マイキーとは12年前に決別したんだ」
「決別…?」
私達が現代に戻ってすぐ…!?
「生死は知らねぇ」
「そんな…」
「嘘をついたのはオマエがアイツのことでこれ以上傷付いてほしくなかったからだ」
「……………」
「この世界は元はオマエが望んだ未来だったんだろ?兄貴が生きていた世界を取り戻した。…全部、叶ったはずだ。」
「(でも…そこに万次郎くんがいないと…)」
ショックで頭痛までし始めた。ズキズキと痛む頭を片手で抑えながら泣きそうになるのを堪える。
「マイキーの事を調べんのはもうやめろ」
「どう…して…」
「12年前…最後に会ったマイキーは…」
「?」
「もう、オレの知ってるマイキーじゃなかった…」
「それはどういう…」
「カノ、悪いことは言わねえ。やっと手にした未来を壊されたくなきゃ、アイツに関わるのはやめとけ」
「ドラケンくん…」
「オマエ自身の幸せまで失うことになるぞ」
真剣な表情と声でそう告げたドラケンに何も言葉を返すことが出来ず、下唇を噛む。いろんなマイナスの感情が心に渦巻き、カノは目の前が真っ暗になった。
◇◆◇
次の日、淡い水色のワンピースを着て、タケミチの待つ場所へと向かうカノ。
「お待たせ」
「…カノちゃん」
「直人くんはまだ来てないんだね」
「あんまり寝てないだろ。また目の下にうっすら隈が出来てるぞ」
「眠れなくて」
「顔色も悪いしさ」
「寝不足気味で」
ベンチに腰を下ろし、目の前に見える景色を茫然と眺める。そんなカノの様子にタケミチは心配そうな顔をしていた。
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