第53章 貴方を助けるために
頭が真っ白になり、混乱していると、ラーメンを食べ終わった女性客が横を通り過ぎた。
カランー…
どこか聞き覚えのある音が耳に響き、無意識に視線が女性の持つ鞄へと向いた。そこには札のようなアクセサリーが付いていて、それを見た瞬間、はっきりと思い出した。
「(あ…。あのタトゥー…ピアスだ。)」
勢い良く椅子から立ち上がれば、トイレから戻ってきたマドカが驚いた顔を見せる。
「突然立ち上がってどうした?」
「(思い出した。あの男のうなじに入れてた刺青、黒川イザナのピアスの模様だ!!)」
「宮村?腹でも下したか?」
「兄ちゃん。女性にそういうデリカシーのないこと聞かないで。」
白トンコツの"スマイリー"を運びながら、スマイリーの発言を注意するアングリー。
「カノ?」
「ごめん兄さん!!先に帰ってて!!スマイリーくんアングリーくんご馳走様でした!!」
「は!?ちょ、おいカノ!?」
「スープ残していきやがった…」
「でも麺は一本も残ってないよ」
突然の出来事にマドカは訳が分からず、唖然とした顔でカノを見送った。
「(10年以上みんなと音信不通の万次郎くん…。あの映像の"白髪の男"はまさか…)」
双悪を飛び出したカノは何処かに向かう途中で携帯を出し、もう一度マイキーの番号に掛けるも、やはり出なかった。
「何で出ないの…っ」
嫌な胸騒ぎが止まらず、焦りと苛立ちで顔をしかめるカノはその足である場所へと駆けて行く。
「ドラケンくん!!」
「カノ…どうした?そんな怖ぇ顔して」
「何で嘘ついたんですか!!?」
「あ?」
「マイキーくんが海外だなんて嘘ですよね?」
「!」
「みんなは"10年以上会ってない"って言ってました。マイキーくんと連絡取り合ってるのも嘘なんですよね?」
「……………」
「あのマイキーくんが10年以上の一度も私に電話やメールをくれないのはおかしいです。それ以前に…マイキーくんから掛けてきた通話履歴もメールもないんですよ」
息を乱しながらバイクの手入れをしていたドラケンの背中に向かって問いかける。
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