第53章 貴方を助けるために
「らっしゃい!」
「こんにちは」
「カノちゃん」
二人を出迎えてくれたのは髪色だけが違う、顔の良く似た双子の兄弟・スマイリーとアングリーだった。
「席こっちでいい?」
「ありがとうございますアングリーくん」
「お兄さんもどうぞ」
「悪いな」
席に座るとマドカが小声で話しかけてきた。
「双子とは驚きだわ。つか、顔と口調が合ってねぇんだけど?あの二人も東卍メンバーだった奴ら?」
「肆番隊の隊長・副隊長だよ。『笑顔(スマイル)の下の心は鬼』のお兄さんのナホヤくんと『ブチギレ顔の天使の心(エンジェル・ハート)』の弟のソウヤくん。通称スマイリーくんとアングリーくんだよ」
「なんつーキャッチフレーズだよ。あぁ…だから暖簾が般若とおかめ。納得だわ。」
常に笑顔を浮かべているスマイリーはテキパキと何個もの麺を茹でており、常に怒り顔のアングリーはテキパキと何人もの客の注文を受けている。
「兄さん何にする?」
「お前のオススメでいいよ」
「なら白トンコツと黒トンコツにするね。すみませーん!注文お願いしまーす!」
「ご注文お伺い致します」
「私は"アングリー"で兄は"スマイリー"をお願いします」
「単品でいい?ライス無料だけど付ける?」
「私は大丈夫です。兄さんは?」
「俺もいいかな。ラーメンだけで頼む」
「かしこまりました」
注文を受け終わったアングリーが離れる。
「ちょっとトイレ行ってくる」
「うん」
席を立ったマドカはトイレに向かった。その間、カノは先程の白髪の男のうなじに描かれた模様について考えていた。
「(あの刺青の模様…どこで見たんだっけ。絶対に知ってるはずなのに思い出せない。)」
「先に白トンコツの"アングリー"。黒トンコツの"スマイリー"はもう少し待ってね」
「いい匂い!」
「いい匂いなのは当たり前なんだよ!」
「おっしゃる通りで!」
「ちゃんと味わって食えよ!」
「いただきます!」
出来たての豚骨ラーメンが目の前に出される。透き通る程の黒いスープにはチャーシューや海苔などがトッピングされており、両手を合わせて箸を割った後、麺を啜った。
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