第53章 貴方を助けるために
「…まだアイツのこと、好きでいてくれてるんだな」
「当たり前じゃないですか。私はこの先もずっと彼を好きでい続けます。今更離れるなんて無理ですよ」
「……………」
ドラケンの視線が左手の薬指に向けられる。
「ねぇドラケンくん、やっとです。やっと私とマイキーくんが二人で幸せになれる未来に辿り着きました。この世界で…彼と一緒に生きていけることが…すごく嬉しい。」
指輪を優しく撫でながら、目に涙を溜めて嬉しそうに微笑むカノを見たドラケンは、どこか辛そうな表情を浮かべ、掌をギュッと握り締めた。
◇◆◇
数日後───。
今日は久しぶりの休みで、マドカの住むマンションに遊びに来ていたカノは冷たいココアを飲みながらソファーで寛いでいた。
「カノ、昼飯どうする?どっか食いに行く?」
「私、ラーメン食べたい。知り合いがやってる美味しいラーメン屋さんがあるの」
「んじゃそこにするか。準備して来るから少し待ってて」
マドカがリビングを出た後、残りのココアを飲み干し、ソファーから立ち上がると…。
《都内での"梵天"の抗争は激化する一方、ついに一般人にまで被害が。》
「!」
《番組が独占入手した梵天メンバーの映像です。》
視聴者が撮った映像には、犯罪組織である梵天メンバーの姿が映し出されていた。
「こういうの…見たくないな」
マドカを亡くした時のことが脳裏を過ぎり、嫌悪感で顔をしかめるカノは、リモコンを手にし、チャンネルを変えようとした。
「あれ…?」
梵天メンバーの中でも背が低く、髪の後ろを刈り上げた白髪の男のうなじに目が止まる。
「(この刺青の柄…どこかで…)」
「待たせたな!そろそろ行くか!」
「あ…うん」
思い出そうとした時、タイミングが良いのか悪いのか、支度を終えたマドカがリビングに戻って来た。カノは白髪の男が気になったが、テレビを消し、マドカと一緒に知り合いが経営しているラーメン屋へと出かけた。
◇◆◇
「ここだよ兄さん」
「暖簾に般若とおかめの絵が…」
店の入口には"双悪"と書かれた暖簾が掛けられており、カノはマドカを連れて店の中に入った。
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