第53章 貴方を助けるために
「彼がいなければ私は、きっと今でも"最悪な未来"を何度も繰り返していた。友達の存在って偉大ですね。私はタケミチくんの友達であることを誇りに思います」
目を閉じた瞼の裏に、共に戦った日々の記憶がはっきりと浮かび、今では懐かしく感じる。
「その最悪な未来から抜け出せたのは、オマエが最後まで諦めなかった成果でもある。タケミっちもきっとオマエと同じこと思ってるよ。…カノが友達で良かったってさ」
「そうだと嬉しいです」
「兄貴を救う為にオレらの世界に飛び込んできて、タケミっちと同じように何度もオレらを助けてくれた。ありがとな、カノ」
こっちを振り向いたドラケンが歯を見せてニッと笑った。それに応えるようにカノも目元を緩ませ、柔らかく笑い返した。
「(さっきまで中学生のみんなと会ってたのに、戻って来たら大人の姿なんて…不思議な感じ。)」
現代(みらい)のみんなはそれぞれの道を歩んでいた。
幼馴染みの花嫁と結婚したパーちんは家業を継いで大金持ちに。ぺーやんは今もパーちんの側近(パートナー)になり、三ツ谷は将来有望の駆け出しファッションデザイナーになった。
八戒は海外で活躍するトップモデルで、妹の柚葉は八戒のマネージャーになり、河田兄弟は二人で『双悪』という名前でラーメン屋を営んでいる。
千冬はペットショップの経営者で、一虎は千冬の店を手伝い、ドラケンはイヌピーと共にバイク屋を経営していた。
「そうだ。あのドラケンくん、マイキーくんに電話掛けても出なくて…どこにいるか知ってますか?」
「マイキーは今、海外で飲食店の経営してるんだ」
「え!?飲食店!?」
「大成功してんだぜ。今日も本当は来る予定だったんだけど急に『仕事が入った』ってよ。ずっと忙しいみたいでさ、オレから掛けても出れない時が多いんだよ」
「そう…だったんですか」
「前にも言ったと思うけどあんま気にすんなよ。オマエのことを蔑ろにしてるわけじゃないからな」
「大丈夫、ちゃんと分かってますよ」
ドラケンの気遣いに軽く笑んで見せる。
「でもすごく忙しいんですね。マイキーくん大丈夫かな、無理して体壊してないといいけど…」
不安げな顔でマイキーの体調を心配する。
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