第52章 辿り着いた未来
背中まであった亜麻色の長い髪は、シニヨン風で纏められており、両耳にはマイキーがくれたガラス玉のイヤリングが付いていて、ブルーグレーのミディ丈のドレスを着ていた。
「化粧ポーチがある。化粧を直してる最中だったのかな?眼鏡も外してるし。」
ゴーンゴーン
「!」
ドレスに鐘の音…
「誰かの結婚式?もしかして招待客として今日は招かれたってこと?」
とりあえず化粧ポーチを持って、トイレから出ることにした。
「遅せぇよカノ!!」
「!」
「化粧直すのにどんだけ掛かってんだよ!!」
「…千冬くん?」
突然名前を呼ばれて怒られたかと思えば、何故か目の前に大人になった黒髪の千冬がいて、カノは驚いた顔を浮かべた。
「何で千冬くんがここに!?」
「はぁ?何訳の分からねぇこと言ってんだよ!早くしねぇと披露宴始まっちまうだろ!?」
急かすように手首を掴まれ、引っ張られるような形で千冬に何処かに連れて行かれる。
「ま、待って千冬くん!!」
「ヒナちゃんも今タケミっち呼びに行ってんだ!オマエら主役待たせんなよ!」
「(どういうこと!?全く展開についていけない!!)」
「つーかカノ。パーちん君の結婚式に男装して来なくて良かったのかよ?」
「え?パーちんくん…?」
「ま、オレはそっちの方がオマエらしくて良いけどな!」
更に頭が混乱したが、少しずつ冷静さを取り戻し始める。
「千冬くん、今日の主役ってまさか…」
言い切る前に扉が開かれた。
「なかなか戻って来ねぇから心配しただろ。やっぱり千冬に探しに行かせて正解だったな」
「ドラケン…くん?」
「早く座れよカノ」
千冬の他にも大勢の招待客がいた。ついさっき別れたはずのみんなが大人になった姿でカノの前に現れ、楽しそうに笑っている。
するとヒナに引っ張られて、タキシードに身を包んだタケミチも会場に現れた。
「タケミチくん!?」
「カノちゃん!?」
二人は顔を見合わせたまま固まる。驚いている間もスポットライトが本日の主役の二人を照らした。
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