第52章 辿り着いた未来
「っ…………」
マイキーの優しい想いにじわりと涙が浮かぶ。
「12年後、改めてまたオマエにプロポーズさせてくれ。今度はちゃんとした場所で。」
「は、ぃ……っ」
堪えていた涙が頬を伝って溢れ出す。マイキーは小さく笑い、カノトの流れる涙の雫を人差し指で拭う。
「万次郎くん」
「ん?」
「ずっと大好きです…っ!」
「うん…オレもずっと大好きだよ、カノ。例え何かが変わったとしても、オレはオマエだけを想い続ける」
チリンー…
「!」
懐かしい鈴の音が響いた。
その音の意味を知っている。
「(そっか…タケミチくん、直人くんと握手したんだ。)」
もう別れの時間だと悟ったカノトは切なげに笑み、マイキーと最後の言葉を交わす。
「お別れみたいです」
「…そっか」
「現代(みらい)で会いましょう」
「12年なんてすぐだ。必ず会いに行くから待ってろ」
「はい」
ギュゥッとお互いの体を抱き締め合う。マイキーの温かな温もりを感じながら、カノトはそっと目を閉じた。
「またな。」
段々と意識が薄れ始め、カノトはもう一度だけ、マイキーの体を強く抱き締める。
「("ありがとう"───……)」
そしてカノトの意識はプツリと途切れた。
◇◆◇
現代───東京。
「……………」
瞼を開けると、そこは女子トイレで、目の前には鏡に映る自分の顔があった。
「…戻ってこれた」
ということは直人くんは生きてる!!
「良かった」
タケミチを庇って稀咲に撃たれた直人の安否が不明だったが、戻って来れたということは現代の直人は無事に生きていることになる。カノトはホッと安堵の息を洩らし、胸を撫で下ろす。
「イザナに撃たれた右肩も治ってる…」
イザナに右肩を撃ち抜かれた時は強烈な痛みで動けなくてもう使い物にならなくなったと思ったが、どうやら過去を塗り替えたおかげで右肩は何ともなかった。
「……………」
ふと、今の自分の格好に違和感を感じた。
「何でドレス?それに髪型も…」
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