第52章 辿り着いた未来
「マジで勘弁して」
「さっきの仕返しです」
「…どう反応していいか困るじゃん」
「その顔を見れば反応なんて分かりますよ」
「あー…クソ、油断した。」
「ふふ」
いつも揶揄われてばかりのカノトからしたら、照れるマイキーは新鮮だった。
「つーかさ、オレもう世界一の幸せ者だよ。カノがどんだけオレのこと愛してくれてるか知ってるし」
「もっともっと幸せにします。未来でも万次郎くんが笑って過ごせるように」
「もっとかぁ。オレ、オマエにどんだけ幸せにしてもらうの?今からスゲェ楽しみなんだけど」
マイキーは嬉しそうに笑っていた。
「なぁ、帰るまでにまだ時間あるよな?カノと行きたい場所があるんだ、付き合ってよ」
「?」
一旦佐野家に寄り、バブに乗って向かった先は、いつか訪れたあの海だった。この時間帯はあまり人はおらず、静けさが漂っている。
「どうしてこの場所に…?」
「最後の時間はここって決めてたんだ。ほら、手。砂浜に足取られて転ばねぇように」
「転びませんよ、大人なので。」
マイキーの差し出す手を取らず、砂浜に足を付けた時、思ったよりも柔らかな砂で、バランスを崩してしまう。
「っ………!」
体への痛みを覚悟した瞬間、咄嗟に腕を掴まれ、マイキーに助けられた。
「大人だから転ばないんじゃなかった?」
「…訂正します、大人でも油断すると転びます」
「だから素直に繋いどけば良かったんだよ。オマエが怪我したらオレも同じとこ傷付けてお揃いにするから次からは気をつけろよ」
「心配されてる筈なのに途中から不穏な言葉が混ざってたんですが」
「それとカノに怪我させたモノは生きてる価値ねぇからオレが粉々に消し去る」
「怖っ!!」
マイキーなら硝子の破片だろうと、潰れたペットボトルだろうと、モノ自体をこの世から抹殺しそうだと思ってしまった。
「今度は繋いでくれるよな?」
「……はい」
ニコッと笑ったマイキーの顔にビビり、素直に手を繋いで海辺に近い砂浜を二人で歩く。
「海に来る約束も12年後に持ち越しだな。せっかくカノのエッロい水着姿をこの目で堪能できると思ったのに」
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