第51章 一途な総長は大人な彼女と幸せな愛に溺れて(❤︎)
「(もしかして…今日ずっと様子がおかしかったのは…)」
「──未来になんか帰るなよ。」
切なげに絞り出された言葉にカノトは目を見張って驚いた。
「負けた方は勝った方のお願い聞くんだろ。オレが勝ったんだからカノに拒否権なんてねーから」
「……………」
「何で…頷いてくんねーの」
「私は…」
言いかけたところで、それ以上は聞きたくたいとでも言うかのように、寂しそうな瞳を宿したマイキーに抱き締められる。
「カノ…頼む。帰んないで…。オレを置いていなくなるなよ。オレはオマエじゃないと駄目なんだ。未来の…26歳のカノじゃないと、オレは…」
「…万次郎くん」
「約束したよな?ずっと傍にいるって。何があってもオレから離れねぇって。オレと一緒に幸せになりたいって…約束、しただろ…っ」
逃がさないとでも云うように、身体を抱き締める腕に力が込められた。
「好きだよカノ。オマエの為だったらオレは何だって出来る。だからずっとここにいろよ…オレと一緒にこの時代で生きて行こう。オマエのことは必ずオレが守ってやるから…っ」
「っ…………」
こうなることは初めから分かっていた
お互いに別れ難くなることも
私の決心が…揺らぐことも。
「(私だって本当は…)」
カノトもマイキーと同じ気持ちだった。彼と出逢い、長い時間を掛けて恋が芽生え、そして愛が生まれた。マイキーの傍を離れたくない。本当ならずっと隣にいて、同じ時代を一緒に生きていきたい。
でもそれを伝えるには生きる時代が遅すぎた。彼は過去の人間で、自分は未来の人間。15歳のマイキーとこの時代で生きていくことは…できない。
「(それにまだ…やることが残ってる。)」
その役目が終わるまでは中途半端にマイキーと一緒に未来を歩むことを望んではいけない。ここは自分が求めたゴールじゃない。だから…決心は変えられない。
「私が現代(みらい)に帰っても、この時代の私が万次郎くんの傍にいます。絶対に貴方を独りにはさせません」
"だから安心していいですよ"
そう寂しげに呟いて、マイキーを抱き締め返す。
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