火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第32章 《番外編》浅縹のひかりに願いを
どうすれば 君に
ふみのに
出会えることが出来るのだろう─────
気付けば、車のフロントガラスには
雨粒が打ち付けていた。
杏寿郎は思い出すかのように、
ワイパーを動かした。
退勤した後、職場の駐車場で
杏寿郎は運転席に座ったまま、
ただぼうっと前を見つめていた。
車内の時計を見ると
かれこれ、30分ほどそうしていたらしい。
杏寿郎は深い溜息をつくと、
車を発進させ自宅へと向かっていった。
杏寿郎が探し求めていた相手とは、
前世にて夫婦として生涯を共に過ごした
一ノ宮ふみのだった。
杏寿郎には、前世の記憶があった。
大正時代にあった鬼殺隊という、
人喰い鬼を狩る政府非公認の組織に
杏寿郎は属していた。
そこでは柱という鬼殺隊の中でも
最も位の高い階級を務め、
鬼を統べる首領・鬼舞辻無惨を
全ての隊員が命を賭けて討伐を成し遂げた。
ふみのは幼い頃に鬼に襲われかけ、
父である槇寿郎がその命を救ったが、
家族を皆亡くしてしまったことから、
煉獄家にて共に過ごすことになったのだ。
そして無惨討伐後、
二人は晴れて結ばれ、
夫婦となったのだった。
同じ職場にいる同僚の宇髄天元、不死川実弥、
冨岡義勇、伊黒小芭内も杏寿郎と同様に
前世の記憶があった。
幸運にもまた再会することができ、
皆で喜びを噛み締めた。
皆の地元、年齢も異なっていたため、
再会して早々に、杏寿郎はふみのが
同級生などにいなかったかと聞くも、
出会したことはないとのことだった。
気落ちする杏寿郎を
皆が慰めてくれた。
杏寿郎は、ふみのが今世に
転生をしていないのではと何度も思ったが、
それでもふみのを探すことを諦めなかった。
きっと ふみのは
どこかで 今を生きている
そう願い続けて数十年。
杏寿郎は今年32歳になろうとしていた。
・・・
「ではホームルームはこれにて終いだ!
皆、気をつけて帰宅するように!」
終礼のベルが校内に鳴り響き、
杏寿郎は教室を出た。
杏寿郎はとある高校にて歴史教師をしていた。
今年は久しぶりに一年生の担任を受け持つことになり、
杏寿郎は新鮮な気持ちを感じていた。