火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第31章 《番外編》咲く色を知るのは
「ふみのおねえさま!
みつけるのがおそすぎます!」
「ご、ごめんね…」
かくれんぼの真っ只中、
広い廊下で仁王立ちになって怒るのは
ふみのの一つ下の妹・よしのだった。
「いつもじかんがかかりすぎです!」
「だ、だって…、どこにいるか
ぜんぜんわからないんだもの…」
よしのはとにかく
隠れることに頗る長けていた。
ふみのが屋敷中を探し歩いている途中でも、
よしのをなかなか見つけられないでいると、
自分からかくれんぼを終わらせてしまうのだ。
「じゃあ、こんどはふみのおねえさまが
かくれてください!」
「えっ、わたしが…っ?」
「はい!わたしならすぐに
ふみのおねえさまをみつけられますよ!
じゃあかぞえます!」
よしのはそう言うと、
くるりと柱に顔を近づけ目を瞑り、
数をかぞえはじめる。
ふみのはよしのに言われるがまま、
駆け足で隠れ場所を探し始めた。
・・・
ど、どこにかくれれば…っ
鬼役はいつも決まってふみのだったので、
いざ隠れようとしても、右往左往してしまう。
よしのが普段どのようにして
隠れ場所を見つけているのか
ふみのには検討もつかなかった。
かあさまのおへやのおしいれ…?
とうさまのごほんのおへや…?
色々と迷っているうちに
時間は刻々と過ぎてゆく。
ふみのは焦り戸惑いながら、
廊下をぱたぱたと駆け足で進んだ。
するとその時、
一番大きな来客用の座敷から
男性の声が聞こえた。
耳を澄ますと、
父・建蔵の声も聞こえてきた。
とうさまと…、
おきゃくさまかな…?
ふみのは忍び足でその座敷へと近づき、
襖の隙間からそうっと部屋の中を覗く。
ふみのは視界に飛び込んできた光景に驚き、
息を呑んだ。
…!!
ほ、ほのおのかみさま…っ?!
ふみのが見た人物は、
特徴的な眉を持ち、炎のような焔色の髪を靡かせた
勇ましい男性だった。
…となりにも、だれかいるのかしら…?
ふみのがさらに奥を見ようとした時、
カタンッ
「…誰かそこにいるのか?」
ふみのは襖に体をぶつけてしまったのだ。