火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第29章 蒼海の天水に光るは
杏寿郎の手がさらにぎゅっと
ふみのの手を握りしめる。
ふみのもそれに応えるように
きゅっときつく握った。
「うん。これからもずっと。
私、杏寿郎が大好きよ」
「ああ、俺もふみのが大好きだ。
この先も、永遠に」
微笑み合う二人の頬が
茜色に染まる。
愛おしい人との
かけがえのない日々。
それは海が毎日異なった顔をみせるように
同じ日がやってくることは決してない。
日常は数えきれないほどの
たくさんのしあわせに溢れているのだ。
どうかそれを見失わないように。
今を生きる皆に
希望のひかりが灯りつづけますように。
「さ、ふみの、家に帰ろう」
「うんっ!」
ふみのと杏寿郎の影が道に伸びてゆく。
西の空に舂く夕陽は
二人をやさしく照らしていた。
火光 − かぎろい − 《 完 》