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火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】

第21章 希(まれ)を込め、想う ˖☽°.*





 帯金殿は もしや…



杏寿郎は、庄衛がふみのに対して
想いを寄せているのではと、その横顔を見つめた。
確信をついている訳ではないが、
庄衛が向ける眼差しから
何処となく恋慕たる儚ささえ感じられた。


「…俺も、ふみのには
 数え切れないほど救われています。
 ふみのがいなければ、此処にはおりません」


ふみのの後ろ姿を見つめる杏寿郎の緋色は
心からその人を愛し、想うものだった。


「お二人に出逢えて良かった。

 この先のふみのと杏寿郎殿の倖せを
 心より願っております。

 御武運を祈ります」


庄衛の瞳に、杏寿郎は頷く。



「はい。必ずや、ふみのを
 護り抜いてみせます」



丈市は杏寿郎と庄衛のやりとりを見届けると、
「では杏寿郎殿の日輪刀も」と、
皆に呼びかけ座卓に箱を置いた。
ふみのもくるりと振り向き、座卓を囲んだ。

杏寿郎は刀を手に持ち、鞘を引き抜くと
その刃は今までよりも一段と紅く染まった。


杏寿郎の心に、更なる灼熱の炎が漲る。


二人の日輪刀は、新しく命を纏い、
次なる使命へとその刃が向けられた。





ふみのと杏寿郎は庄衛と丈市に礼を伝え、
離れに戻ると帰り支度を始めた。
要から薫子へと伝達を頼み、
翌朝の早朝に里を発つことにした。





里での最後の夜。

ふみのは使った台所を杏寿郎と片付け終えると、
茶を沸かし淹れていた。

盆に湯呑みを乗せ居間に向かうと、
杏寿郎は漆黒に浮かぶ満月を縁側に座り眺めていた。


「杏寿郎、お茶を淹れたけど、飲む?」

「ああ、すまない。
 色々と任せっきりにしてしまった」


ううん、大丈夫よと、ふみのは膝をつき、
杏寿郎に湯呑みを差し出した。

「綺麗な月夜ね」

ふみのは立ち上がると、
戸から顔を覗かせ、月明に目を細める。
神々しい月光は柔らかくふみのを照らした。


「あっという間だったな」

「本当ね。とっても幸せな時間だったな。
 …終わって欲しくないって…思っちゃう」


杏寿郎に振り返り、
少し寂しげに笑うふみの。


「…ふみの、こっちへおいで」


杏寿郎がそっと手を差し出し出すと、
ふみのはその手を握り、隣に腰を下ろした。

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