火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第21章 希(まれ)を込め、想う ˖☽°.*
「ふみの。
俺もこの上なく、幸せに思う」
杏寿郎は熱くなる目頭を抑え、
再びふみのを強く抱きしめた。
愛する人が腕の中にいる歓びと幸せ
何度も感じてきた幸福は、
日に日に色を濃くしていく。
愛する人が、隣にいることは
決して当たり前ではないのだ。
この先の未来に何が待ち受けていようと
いま、この瞬間を、共に過ごせる奇跡。
生きることは、
誰かを愛していくこと。
人は愛し愛されて
その運命を生き抜いていく。
ふみのを
杏寿郎を
心から 愛する倖せ─────
この想いが永遠(とわ)に続くことを願い、
月明かりが照らす夜の秋風に乗せて、
二人はそっと祈りを捧げた。
日輪刀が出来上がるまでの残りの時間を、
ふみのと杏寿郎は鍛錬も行いつつ、
穏やかな時を過ごした。
ふみのの腕と握力も、
湯の効能と日々の鍛錬の成果もあり、
柄を掴めるまでに回復していた。
刀鍛冶の里には、
“炎柱と光柱は夫婦だったらしい”と噂が立つ程に、
二人の仲睦まじさが里中に知れ渡っていた。
そして二人が里に来て、十日経った朝、
庄衛の鎹鴉・作(つぐる)より、
ふみのの日輪刀が完成したとの知らせが届いた。
ふみのと杏寿郎は支度をすると、
すぐに庄衛の元へ向かった。
作に導かれ家に着くと、
庄衛が居間へと案内してくれた。
そこには杏寿郎の日輪刀を打った
火撫丈市の姿もそこにあった。
「! 火撫殿!」
「やあ、杏寿郎殿、ふみのさん。お早う。
七日と伝えたのに、遅くなってすまなかった。
庄衛殿の鴉がふみのさんの刀の完成を知らせてくれて
一緒に渡せればと思ってね」
「本来であれば、
こちらからお伺いしなければいけないところ、
申し訳ありません。
お気遣い頂き、ありがとうございます」
杏寿郎が挨拶を交わしていると、
庄衛が茶を持って居間に入ってきた。
茶を座卓に置くと、丈市は庄衛に目配せをする。
「ふみの殿、お待たせを致しました」
庄衛は細長い木箱を持ち、ふみのの膝下に置くと、
そっと蓋を開けた。
丁寧に包まれた絹を解くと、
ふみのの日輪刀が姿を現した。
初めて見た時と同じく、
鞘の艶やかな濃紺が美しく輝く。