火光 − かぎろい − 【鬼滅の刃 / 煉獄杏寿郎】
第16章 霞ゆく光、産屋敷家との出会い
杏寿郎からの返事にふみのは、
今は一人になりたい、
しばらく手紙のやりとりも控えたいとだけ綴った。
もうこれで杏寿郎からの返事は途絶えると思った。
しかし杏寿郎は最後に一通だけ、
杲に手紙を持たせた。
その文には、
ふみのに今も想いを寄せていること、
愛おしく思うのはふみのだけだと、
綴られていた。
自分がふみのに対し、
何か不快に思わせてしまったことがあるなら
詫びたいとまで書かれていた。
いつも、ふみののことを想っている、
此処でふみのの帰りを待っている、と。
杏寿郎の手紙に、
ぽたぽたとふみのの涙が滲む。
傷つけることばかりしているのに、
こんなにも自分を想ってくれる杏寿郎に
ふみのは涙が止まらなかった。
でも、自分が側にいれば、杏寿郎のことを想えば、
何か影響を及ぼしてしまうのではないかと
ふみのはその恐怖に駆られた。
このまま、残虐な自分から
身を引いて欲しいのに。
そう思うのに、思うたびに
ふみのは痛いほどに胸が締め付けられた。
「ふみのガ心配…。
本当ニ、コノママデ、イイノ…?」
「…うん。もうそう決めたの。
杲さん、ありがとうね」
ふみのは寄り添ってくれる杲の頭を撫でた。
しかしふみのは
光の呼吸を恨むことはしなかった。
そうはできなかった。
今まで、数えきれないほどの鬼の頚を
日輪刀で、光の呼吸で、斬ってきた。
光の呼吸がこれまで
幾度も自分を支えてくれた。
今もこうして鬼を倒せるのは
この光の呼吸と日輪刀があってこそだ。
蓮や杏寿郎、千寿郎、蜜璃としのぶも
皆が、綺麗で美しいと言ってくれた光の呼吸は
ふみの自身の一部に、なっていた。
ふみのは、呪いの存在を
どこかで否定している自分もいた。
蓮の死は、自分の失態の所為であり
この呼吸に纏わる呪いだとは
思いたくなかった。
悪しき鬼を滅する為の呼吸が、
人の命を奪うなど、
信じたくなかったのだ。
でも、呪いの真相は分からない
呪いは存在するかもしれない
全ては自分の努力不足だ
もっと強くならなければ
大切なものは守れない─────