第11章 一緒に
「あのね…お父さん、お母さん」
重く感じる唇を開き、私は覚悟を決めた。
「和…也がね…私の大事な人がね…」
冷や汗までかいている。
手足も震えて、冷たい。
「あの…ね…」
言葉がうまく出てこない。
当然だ。こんなこと、人生の中で普通言わないのだから。
目を閉じ、深呼吸する。
「あ…」
「お姉ちゃん、すごい汗だよ?大丈夫?具合が悪いの?」
目を開くと目の前には秀一くんの顔があった。
いつの間に私の目の前に来たんだろうか。
顔が近くて、お母さんたちがどんな顔をしているのかわからない。
「だ、大丈夫だよ…」
「嘘だよ。お姉ちゃん、今日は休んだほうがいいよ?ね、二人共」
秀一くんはくるりと振り向き、お母さんたちを味方につけた。
二人共口々に「そうだね」とか「早く寝なさい」とか言って、私は従うしかなかった。