第8章 あの日から
「……」
1人、部屋に残される。
秀一くん…………やっぱり私を出してくれないのかな…?
「お姉ちゃん…明日、父さんたちが帰ってくるってさ」
「……え?」
閉ざされた扉の向こうから秀一くんの声が聞こえる。
「大丈夫…父さんも男だ。何するかわかんないもんね?この部屋で、ずっとお姉ちゃんは守ってあげるよ。だから、そんなに不安にならないで?」
「守るって……出してくれないってこと?」
「やだなぁ。そんな言い方しないでよ。僕はお姉ちゃんが心配だからしてるんだよ?お姉ちゃんだって、嬉しいでしょ?」
「そんなの!……嬉しくないよ…」
「……」
「お願い秀一くん!……もうやめて…」
「お姉ちゃんは今疲れてるんだね。そんなこと言うなんて…。もう寝たほうがいいよ。おやすみ」
足音が遠ざかり、秀一くんの声も途切れる。
まだ朝だ。
おやすみと言われたって、眠いわけがない。
そうか…秀一くんは遠まわしに、ご飯は無いよ。と、言っているのか……。
和也。
和也。
私の頭の中はその名前で一杯だった。
私の幼馴染で、何でもかんでも相談しあえる仲だった。
私は無意識に携帯を取り出し、和也にメールを打っていた。
『和也。学校には行けないけど…メールとかならできるから……少し、話し相手になってくれないかな?』
秀一くんは和也に、私は会いたくないと言っている。と伝えているみたいだから、もしかしたら、返信すら来ないかもしれない。
でも私は……もう限界だった。