第8章 あの日から
私の腕は、あっさりと捕まえられてしまう。
「まったく………外に行っちゃダメだってば…」
秀一くんは私の顎を掴み、目を合わせる。
「外に出たら、お姉ちゃん他の男を見るじゃない?俺以外の……俺以外の声…聞くじゃない……?」
顎に触れている手に力がこもる。
声も…震える。
怒りに。
「そんなの……そんなの嫌だよ!許せない許せない許せない許せない、許せない!!!」
「…ぁ…っ!」
力強く押され床に倒れる。
背中を強く打った。………………痛い。
私の上に乗り、顔を押さえる。
「この眼は!僕を……僕だけを見てればいいんだよ?僕だけの声を聞いてればいいんだよ?ねぇ…そうだよね……?ん…………」
私の口は、秀一くんの柔らかい物に塞がれた。
「んんっ…………!」
「はっ…………何で泣いてんの?」
気づけば私の頬には涙が伝っていた。
秀一くんは………
「……あ、そっか…フフ………嬉しいんだね。僕がこんなに思ってるから……そっかぁ…フフ……アハハハ」
再び笑い、顔を近づける。
私は顔をそらす。
キスをされたくないとか、そういうんじゃなくて……
ただ、怖くて。
あの可愛い秀一くんが……こんなに、怖い……。
そらした顔。
気にくわなかったのか、小さく舌打ちが聞こえた。
その後、身体が軽くなった。
秀一くんが立ち上がって、部屋から出ていったのだ。