第6章 よかった
「じゃあねお姉ちゃん!」
「うん!また家でね!」
分かれ道、秀一くんはブンブンと手を振りながら歩いていく。
どんどん小さくなって、見えなくなった。
「なぁ美琴。お前、何かあっただろ?」
秀一くんが見えなくなったのを確認した後、和也が口を開いた。
…………たしかに、あったよ。
昨日の秀一くんは、おかしかった。
ううん。怖かった。
また、あんなことをされるのか。すごく怖い。
でも、寝るときは、可愛い秀一くんに戻った。
きっと、引っ越しで疲れただけ。そうだよ。
「無いよ」
「…………………………ふーん」
まだ納得していないようだったけど、とりあえず返事をくれた。
『無理には聞かない』ってことだと思う。
昔からそう。和也は、優しい。
「ま、言いたくなったら言え……よっ!」
「うわっ!ちょっと和也っ!」
私の頭をくしゃくしゃとする和也の手。
安心する。すごく。
和也はケラケラと笑いながら歩き始める。
私は和也の後を追うようにして学校に向かった。