第3章 あれ………?
「携帯…………わ、忘れてきたの!」
苦しい言い訳かもしれない。
でも、言わないよりはいいと思って嘘をつく。
「ふーん………」
それだけ言って、秀一くんは自分の携帯を取り出す。
嫌な予感がする…………
〜〜♪
…………!!!
私のポケットから、携帯の着信音が鳴り、その音は静かな部屋に虚しく響く。
秀一くんは、音の出ている場所を特定すると、ニヤリと、笑う。
「あれ?あるじゃん、携帯」
「っ!!」
怖い………
いつもの可愛い秀一くんじゃない。
別人みたいだ。
秀一くんは私から携帯を取り上げようと、ポケットに手を伸ばしてくる。
嫌っ!!
私は秀一くんの手を掴んだ。
すると秀一くんは動きを止めて、
「お姉ちゃん、僕のこと…………好き?」
と、いつもの顔で聞いてくる。
さっきの顔じゃない。いつもの、可愛い秀一くんだ。
「………う、ん。す………きだよ?」
多分、その豹変に騙されたんだと思う。
いつもの可愛い秀一くんを思い浮かべて、私は返事をした。
「僕も…………好き。だぁい好き、お姉ちゃん………」
力が抜けた私の手をどかし、秀一くんは私を抱きしめながらそう呟く。
いつもの顔。
いつもの声。
そのことに安心してしまう。
安心、してしまった。