第1章 特技は月刊誌を引きちぎる事です。
彼の横を足早に3人で通り過ぎる。
横目で彼を見ると彼も横目でコチラを見てた。
サングラスで見えなかったケド横目から合った目は綺麗な碧眼だった。
「むっさん、見ました?」
『ん?何が?』
「あの人、むっさんの事めっちゃ見てましたよ」
『え、マジ?がん飛ばされてた?』
「陸奥なんかしたの?」
『今日のスカートがいつもより短めだから?』
「女子中学生の目のつけられかた(笑)」
「呼び出し確定だな」
笑いながら戻って、休憩を過ごしてまた就業に戻るとあんなに印象深かったのに入口に居たヤンキーの事なんてすっかり忘れてた。
「陸奥、もう終わる?」
『あぁーはい、終わりますぅぅう』
「...あと何件まとめるの?」
『3エリアです』
「...終わんないね。お先、お疲れ〜」
『ぉぉお疲れ様ですうぅぅ』
Excelと資料を交互に睨みながらタイピングしてく、タイピングの速度は遅い。
タイピングは苦手じゃない。パソコンも嫌いじゃない。強いて言うならExcelは嫌い。だけど本当はもっと早く終わらせられる。
でも、早く終わらせると彼と鉢合わせてしまう。
だから少しでも長く時間を稼ぐ。
キリのいい所で終わらせてビルを出る。
一応、周りを見渡す。
彼が待ち伏せしてない事を確認するとホッと一息ついて一歩踏み出した。
「ねぇ」
突然の声。声がした方向をむくと昼にみんなで話してた誰かの彼氏くんがベンチに座りながらコチラに話しかけてきた。
『は、はぃ』
ビックリして間抜けな返事をすると彼はこちらへ近付いてきて、目の前に来ると私を見下ろした。...デカ!怖っ!!
「うーん、顔違くない?これ盛りすぎじゃない?」
そう言って彼が見せてきたのは私の社員証。