第2章 しじみ汁は沁みるんだ。
『いらっしゃいませ〜』
「あれ、思ったより良いとこ住んでるじゃん」
玄関の鍵を開けて悟くんを招き入れた。
コンビニで買ったお酒とおつまみの袋を持って悟くんは躊躇なく家へ上がった。
くそっ!なんで財布を会社に忘れたんだ!
結局、ラーメン代は悟くんに出してもらって急いで会社に戻ったけど中には入れてもらえず...
仕方なく、悟くんにお酒とおつまみとDVD代+更にはタクシー代まで出してもらって流石にそれでさようならする訳にもいかず、家にあげている。
リビングに上がると悟くんが止まった。
「え、汚っ」
『ん?そう?』
ソファーの上で山となっている取り込んだ洗濯物、テーブルの上で列を生してる空き缶とペットボトル、下げ忘れた皿...確かに綺麗とは言えないか。
『最近ちょっと忙しくって〜片付けますね』
「...女の部屋じゃないよ」
『うるさいなぁ〜』
洗濯物を抱えて、襖を開けて隣の和室へと置く。
缶とペットボトルをゴミ袋へ入れて、お皿を流しへと片づける。
台拭きで机を拭くとけっこーマシになった。
その間に悟くんは部屋を見渡しながら買ってきたものをテーブルに広げつつ借りたDVDを物色してた。
「ねぇ、この家は賃貸?」
『なんで?』
「いや、賃貸にしてはでかいし、一人暮らしの割には家具も揃ってるし庭も綺麗だったから。」
意外にそうゆうの見るタイプなんだ...
『母方の祖父母の家だったの、去年2人とも亡くなっちゃって...取り壊すって叔母さんが言うから私が住むことにしたの』
大好きだったおじいちゃんとおばあちゃん。
2人が急に亡くなって落ち込んでる母に叔母は「義姉さんは出ていったから私の好きにさせてくださいね」と言って、この家を取り壊そうとした。
だけど、おじいちゃんの遺言書でこの家の存続権を母にと書いてくれたおかげで私が住むことにした。
名義は母なので私は毎月家賃をキチンと払って住まわせてもらってる。
まぁ賃貸だよね。ほぼ。
大好きだった祖父母の大切な家を取り壊す位なら私が住んで、祖父母に少しでも安心してもらいた。