• テキストサイズ

彼が異常ですが怖いので何も言いません。

第11章 あなたのいない世界


「……どうぞ。」


警部さんが、特別に。と。コウちゃんが死刑執行されるまでの20分。面会の時間を作ってくれた。


「…」

「…」


静かな部屋の中にいる……ただ1人の愛おしい人。


「……菜月。」


アクリル板越しに聞こえるコウちゃんの声。


「っ…。」

「……会いたかった。」

「っ……コウちゃん……っ……。」


ボロボロと涙がこぼれ落ちる。


「…20分後に、俺死ぬんだって。」

「…っ……。」


もうどうにもならないことはわかっている。わかっているけど、この状況を否定したくてたまらない。この前までは笑っていたのに……もうどうしようもない。


「…」


これから死ぬというのに、彼は至って冷静で、少し口角が上がっているようにも見える。どうして……この世界からいなくなる彼が笑っていて、いなくならない私が泣いているのだろう……。


「お前に会えて幸せだった。無理やりにでも、部屋に連れ込んで良かった。」

「っ……死なないで…っ……。」

「フッ……今まで、数えきれねぇぐらい、人間を殺した。そんな俺の尻尾も掴めなかったゴミ共に、油断してたのかもしれねぇな。」
/ 162ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp