第11章 あなたのいない世界
「……どうぞ。」
警部さんが、特別に。と。コウちゃんが死刑執行されるまでの20分。面会の時間を作ってくれた。
「…」
「…」
静かな部屋の中にいる……ただ1人の愛おしい人。
「……菜月。」
アクリル板越しに聞こえるコウちゃんの声。
「っ…。」
「……会いたかった。」
「っ……コウちゃん……っ……。」
ボロボロと涙がこぼれ落ちる。
「…20分後に、俺死ぬんだって。」
「…っ……。」
もうどうにもならないことはわかっている。わかっているけど、この状況を否定したくてたまらない。この前までは笑っていたのに……もうどうしようもない。
「…」
これから死ぬというのに、彼は至って冷静で、少し口角が上がっているようにも見える。どうして……この世界からいなくなる彼が笑っていて、いなくならない私が泣いているのだろう……。
「お前に会えて幸せだった。無理やりにでも、部屋に連れ込んで良かった。」
「っ……死なないで…っ……。」
「フッ……今まで、数えきれねぇぐらい、人間を殺した。そんな俺の尻尾も掴めなかったゴミ共に、油断してたのかもしれねぇな。」