第9章 あなたの為ならば…
*
「あっ、コウちゃんおかえり〜。」
「おかえり。」
「ん。」
私の隣に座り、煙草に火をつけた。
「…ん。」
「!…くれるの?ありがとう!」
レジ袋からプリンを取り出し、渡してくれた。
「…甘いねぇ…コウちゃん。」
「…」
「まぁそっか。10年もずっと見続けてきたんだもんねぇ。」
「…あのさ、コウちゃんと私はどこで会ったの…?ごめん…私全然覚えてなくて…。」
「え、会ってないんでしょ?」
「……え?」
「…一目惚れした。」
「…は?……え?」
「はははっ!!もっと運命的な出会い方だと思った?」
「は、はい……でも一目惚れって…どうして…?」
「コウちゃんと俺が施設に帰ろうとした時なんだけど…」
イチさんが話そうとした時だった。聞き覚えのない着信音が鳴った。
「あぁ、俺だ……もしもし?シュウちゃん?どしたの?……え?あぁ…わかったすぐ行く。」
電話はすぐに終わり、イチさんはコウちゃんを見た。
「シュウちゃんが北笠組の連中と鉢合わせたっぽい。逃げてるって。1人でもいけるけど人数多くてちょっと厄介だ。って。」
「…ん。」
コウちゃんは立ち上がり、煙草の火を消した。そして私の頭を少し強く撫で、一言言った。
「行ってくる。」
「……気をつけてね?」
「ん。」
「じゃ、行ってきます〜。」
「お気をつけて…。」