第1章 迷い人
現実は小説よりもきなりという諺がある。確か意味は、現実に実際に起こる出来事は空想によって書かれた物語より不思議だとかないだとか。
「……何これ、どういう状況なのこれ」
久しぶりに帰って来てみれば、リビングに外国人らしき男と女が並んですやすやと眠っていた。
てかこの人なんで寝たままサングラスしてんの?おしゃれなの?どうやって入ってきたんだよ。ウチカギかけてたよね?
「え……」
ぶつぶつ呟きながら観察していると、不意に女性が目を開けて起き上がる。
「ヒイイ」
「Hello, you are a survivor.?」
「はい?」
聴き慣れない言葉に驚く。
「are you injured?」
「アイ キャント スピーク イングリッシュ」
英語が話せないと言うと、彼女は悩ましげに顔を顰める。
「ok.ウーン。I was in trouble」
私はカバンの中からイヤホン型翻訳機を取り出して自分の片耳につっこんだ。
「えーっとそれであなたたちは?」
一瞬女性が驚きの表情を見せるが、即座に顔の表情を引き締める。
「私は、ジル:バレンタイン。
アークレイ山地で発生した猟奇殺人事件の捜査に来て、捜索中に気づいたらここにいたのよ」
「じゃあ、あなたたちは啓治さんですか?」
「うーん……まあそんなものね。それでここはどこかしら?」
「私の家です」
「致命を聞いているのだけど……」
「名古屋ですけど……」
「え、アメリカじゃないの?」
「へ?アメリカ?全然違いますよ。ここは日本です」
ジルはありえないと口を引き攣らせる。そしてふと右横を見たジルは、ヒュッと息を漏らす。
「まさかウェスカー…。まで」
ぼそりと呟いたジルは銃を抜き、銃口をサングラス男に向けた。
「ちょちょちょお、それだめー!!」
咄嗟にジルの前に立ち落ち着かせる。
「こいつは裏切り者なの!そこをどいて」
「だめだって、ここ日本。銃だめ絶対!」
わあわあ言いあっていると、私の後ろで寝ていた男がむくりと起きて、ジルに落ち着いた声で言う。
「落ち着けジル今すぐ拳銃を納めろ」
「………仕方がないわね」
渋々銃を下ろしたジルは、何故かウェスカーと呼ばれた男を睨みつけている。
「彼奴は、ウェスカーよ」