第2章 指名
ーー時は大正。
鬼と呼ばれる化け物が闊歩していた頃。
『鬼殺隊』と呼ばれる組織があったーー
鱗滝さんの所で修行していた俺たちは二人同時に柱になり、日々職務に励んでいた。
それだけでも注目を集めていたと言うのに、それぞれの継子を指名する際に同じ者を指名したことで、再び注目を集めることとなったのである。
「義勇、どういうつもりだ?」
「錆兎こそ、どういうつもりだ?」
「どうもこうもないだろう?華恋を指名したのは俺だ」
「俺も華恋を指名した…相手が錆兎だとしても、譲るつもりはない…」
義勇と錆兎は一人の少女を双方共に継子にしたいと本人を前にしてそう言った。
「えーっと、私今水の呼吸使ってないんですけど…」
少女は俯きながら申し訳無さそうに応える。
「だとしても、それは水の呼吸から派生したものだろう?」
「お前の技の流麗さ、かなりの技量と見た…」
すっとどちらともなく、差し出された手。
「だから俺の継ぐ子になれ。華恋…」
「いいや。義勇の所じゃなく、俺の継ぐ子になれ。華恋」
そうして先ほどからこの調子である。