第97章 忘れられないように※
作戦の日まで残り1週間。準備はある程度終わっているようで、あとは確認と調整だけだ。
薬と写真はちゃんと渡してくれただろうか。バーボンとキールは姿は見なくなったけど、与えられた任務は本人達がこなしているようだ。そろそろ動いてくれないと困るのだけど。
志保に渡すものの準備が終わったし、寝る時間も増えたおかげか体調も前ほど酷くはない。食欲だけは相変わらずだけど。無意識だけど作戦前だから緊張してるんだろうか。
ドアの開く音がして、ベッドに転がっていた体を起こす。入ってきたジンに声をかけた。
『今日は終わり?』
「ああ」
ジンの帽子とコートを預かって壁にかける。視線を感じて振り返るとジンと目が合った。
『ん?どうしたの?』
「……いや、なんでもねぇ」
そう言ってジンはバスルームに入っていった。
再びベッドでゴロゴロしているとジンが戻ってきた。ジンはベッドに腰掛けてタバコを吸っている。私は手持ち無沙汰で目の前の銀髪を指先に絡めて遊ぶ。くるくると指に巻き付けながらその匂いを吸い込む。ジンの匂いとシャンプーの香りが混ざったこれがとても好き。
「やめろ、吸うな」
『んー、だってこれ好きだし……』
落ち着くし、少しクラクラする匂い。ちょっとムラっともする。
『ねぇ、明日の予定は?』
「……急ぎはねぇ」
『ん、じゃあセックスしよ』
「……」
『嫌ならいいけど……』
「そうは言ってねぇだろ」
ジンはタバコの火を消してこちらを向いた。そして、そのまま覆いかぶさってくる。
『なんか、久しぶり?』
「……そうだったか?」
「ずっとバタバタしてたし、この先も落ち着くまで時間かかりそうだし……今日しないとしばらくできない気がする」
「そうかもな」
私の唇をジンの唇が塞ぐ。すぐに舌が入り込んできて残ったタバコの苦さを感じた。荒々しい舌の動きに下腹部の辺りがキュッとする。
「キスだけでそんな顔しててこの先持つのか?」
唇を離したジンがニヤリと笑う。
『ジンが最初から飛ばしすぎなだけでしょ』
「どうだかな」
ジンの手が体のラインをなぞる。そんな刺激でさえ身体の奥を疼かせた。ジンの顔が耳に寄せられて、肌に当たる吐息を感じた。
「てめぇが誘ったんだ。満足するまで付き合えよ」
『……ん』