第74章 余裕なフリ※
『ふぅ……』
乳白色のお湯に肩まで浸かって一息つく。初めて買った入浴剤はつい最近の出来事を思い出させる。
志保……本当に会えてよかった。もちろん私から会いに行くことはしない。だからこそ、何度も思い出してしまう。頬が緩まないようにため息を着いた回数なんてもうわからない。
でも、気をつけなきゃ。志保のことがバレたら……消されるのは彼女だけではない。
ベルモットに関しては警戒はしてるけど、それでも簡単にあの約束を破らないと信じてる。もし、そんなことがあればこちらだって考えが……そんなことをかんがえていると、ガチャっとバスルームのドアが開いてジンが入ってきた。
『おかえり』
「……ああ」
それだけ言ってジンはシャワーを頭から浴びて身体を流す。その様子をただぼーっと眺めた。
普段は大きめのコートを着てるからわかりにくいけど、程よく鍛えられた筋肉とその背を流れる銀の髪。本当に絵になるし、すごく好き。
「うるせえ」
『……私何か言った?』
「視線がうるせえんだ。ジロジロ見るな」
『ケチ』
「言ってろ」
ジンはシャワーを止めて、バスタブの中へ。ジンの足の間に収まると、私の肩をつぅっ……と指がなぞっていく。片方の腕は腰を緩く抱いている。
『くすぐったい』
ムッとしながら顔だけ振り向かせるけど、ジンの指はそのまま身体をなぞる。肩から腕へ、また戻って背筋を往復して首筋へ……髪をまとめあげているせいでむき出しの首筋に指とは違う感触が這った。
『んっ、舐めないでよ……っ』
「……減るもんじゃねえだろ」
ねっとりと首筋を舐めあげられて思わず身体を震わせた。
『っ……もう!』
腰に回っていたジンの腕を解いて振り返る。膝立ちになってジンに顔を寄せる。
「あ?」
『ずるい、ジンばっかり』
ジンの唇を舌先でなぞった。目を細めて笑い、今度はジンの耳を舐める。耳の縁を舐めあげながら、時々唇で噛む。
『……邪魔しないでよ』
私の太ももを這うジンの手を掴んで言った。
「それがいつまで続くか見物だな」
挑発するように鼻で笑われた。いつまでもされるがままでいるとおもうな……半ばヤケになりながらジンの身体に舌と指を這わせていく。
両耳を好き勝手させてもらって、今度は首筋に。筋の浮き出た白い首に吸い付いてみるものの、相変わらずはっきりとした印はつかない。