第35章 溶けるくらい※
軽いキスを何度もしながら、徐々に肌への空気の動きを感じる。身体に触れる手は異様なくらい優しくて、変に緊張してしまう。
「……力抜け」
『だって、なんか……昨日と違うから……』
あんなに酷い抱かれ方は初めてだったし、ジンに恐怖を抱いたのも事実。でも、ただ触れられるだけでそれが少しずつ薄らいでいくから戸惑ってしまう。
簡単に変わっていく自分が、一番怖いのかもしれない。
「……その分、たくさんしてやる」
耳に息がかかる。ゆっくりと縁をなぞっていく舌先動きも、噛む力もいつもより優しい。聞こえる水音の響きもゆっくり。ゾワゾワした感覚はあるのに刺激が弱いから、焦れったくて仕方ない。もっとちゃんと触って欲しいのに。
耳からジンの唇が離れたかと思うと、次は首筋。所々軽く吸い付かれて、上書きの為に付けられた噛み跡にはそっと舌が這う。手は身体のラインをなぞるだけで、胸や下の欲しい所には触れてくれない。
『っ、うっ……』
首の中央をゆっくり舐めあげられて、思わず声が漏れた。それを塞ぐかのようにまた唇が重なる。
「いいな、その顔」
『……私、どんな顔してるの』
「欲しくて堪らねえって顔」
ジンの右手が頬を包む。視線が合わせられて、全てを見抜かれた気がして身体の奥が波打つ。
『わかってるなら……』
「すぐ終わらせるわけねえだろ」
そう言って、次にキスが落とされたのは肩、そして鎖骨。手は横腹の辺りを行き来している。
『ねえ……それくすぐったい』
「ん……」
すると手は腰からお尻をサラりと撫でた。そして太ももを外側から内側へ、触れるか触れないかくらいの力でどんどん中心へ……それなのに、触れる前にまた遠ざかっていく。
キスが落とされる場所も、下がってきたけど胸の横とか膨らみの境目とか。
『なんで……っ』
「なにが」
『もういいじゃん、触ってよ……』
「……今日はどんなに強請られたって俺のしたいようにする」
『いじわるっ……』
「何とでも言え。それに……」
ジンが私の脚の付け根を指でなぞりながらニヤッと笑う。
「どうせ抑えなんか効かなくなる。理性が持つ内にたくさん焦らして……その方がいいだろ?」
『そんなのおかしくなる……』
「なっちまえ。俺はもうとっくにおかしくなってる……責任取れよ。亜夜、お前のせいだからな」