第2章 1章
鍋がコトコトと音をたて、オーブンからはパンの焼けるいい匂いがする
『ん、美味しい』
スープの味を確認し、そう呟く。今日のスープは簡単な野菜スープだ、代わりにサンドイッチにはベーコンや卵など主食になる食材を入れている
コーヒーをカップに注ぎ、ダイニングルームに朝食を置いていく。フルーツの入ったバスケットを置いたと同時に、扉が開いた
『あ、ミホーク様!ちょうど作り終えましたっ』
パタパタと駆け寄ると、また頭に手を置かれた
「冷める前に食べるぞ」
そう言って、先にテーブルについた。ご飯を食べるときはいつも一緒に食べ始める、気分屋のミホーク様も絶対守ることの1つ
『いただきます!』
手を合わせてそう言うと、ミホーク様もご飯に手をつけ始める
『…ん、そう言えばミホーク様』
サンドイッチにかぶりつきながら、ミホーク様の方に視線を向ける
「何だ…食べながら話すのは行儀が悪いぞ」
ゴクンとパンを飲み込んでから、口を開く
『えへ、ごめんなさい。朝食がいつも代わり映えしなくて飽きてないかなって思ってて』
「何も思わないが…味も問題ないしな」
『む、素直に美味しいって言ってくださいよ』
「そうだな…ならば俺も調理場に立つとしよう」
ん…?ミホーク様、がキッチンに?
『え"っ…!?』
驚いて声をあげると、ミホーク様は不快そうに眉をひそめ
「何だ、俺の料理に何か不満でもあるのか」
『いえっ!ただ…師であるミホーク様にそんなことを…』
「その俺が言っているんだ。俺も料理はできる、問題ない」
怒った様に呟くミホーク様はただただ可愛らしい、キッチンに立つミホーク様もそうなんだろうなと失礼な考えが頭を埋め尽くす
『楽しみにしてますね』
にこにこと笑いながら、コーヒーに口をつける。砂糖とミルクはたっぷり入れている
『ケホッ……にが、』
「何故そう無理までして飲むんだ、毎回」
『だって、尊敬してる人と同じもの飲めるようになりたいじゃないですか』
膨れっ面になりながらそう呟くと、ミホーク様は心底愉快そうに目を細めた