第2章 1章
誰もいない大きな廊下を、ゆっくりと歩く。コツコツと言う音だけが響き、この城に馴れない人には気味悪く感じるだろう
目当ての部屋に着いたので、ノックをしてから中に入る
『…ミホーク様?朝ですよ』
ベッドで姿勢よく眠っている自分の師でもある彼に声をかける
『ミホーク様、起きてくださいっ』
「……ああ」
少し不機嫌そうに呟いているように見えるが、そうではない。ミホーク様はただ単に朝に弱いのだ。ミホーク様のベッドに手をついて顔を覗きこむ
『ミホーク様っ、今日の鍛練はどこで行いますか?城の前ですか?海の近く?あ、ヒューマンドリルがいる森奥ですかっ?』
ミホーク様との鍛練が嬉しく、楽しみなのでつい興奮した口調になってしまう
「……落ち着け、今日は鍛練は無しだ」
その言葉と共に、頬をゆっくりと撫でられる
『…はいっ、ならば私は今日は書庫にいますね』
ミホーク様が鍛練を無しにすることは多々ある。意外に気分屋だし、私の傷の治りを見て決めてくれていることもある
「ああ……しかし、書庫は退屈でないか?」
『そんなことありません!たくさんの国の歴史から著名な文献、多くの書物がありますから』
そう言って微笑むと、また柔らかな手つきで頭を撫でられる
「そうか、ならいい。朝食にするぞ」
『はいっ、先に準備してきますね!準備ができたら来てください』
ミホーク様の部屋を後にして、キッチンへと向かう。基本生活に必要な部屋とかは固まっているけど、自分達の部屋は離れているから難点だ。
勿論ミホーク様の部屋の近くを自分の部屋にしている。結構大きい部屋、多分王族の誰かの部屋だろう
『……今日はどうしよう』
いつも通りの朝食は少し、いやかなり飽きがきていた。パンにサラダにスープ、そんなものばかりだ。かといって、朝に弱いミホーク様に重いものを食べさせるのも気が引ける
『……………』
考える時間も勿体無い、サンドイッチにしてしまおう。コーヒーも忘れずに準備する、今日は鍛練が無い分ゆっくり朝食を食べられるかなと思い、口元を綻ばせた