第6章 秋の鬼滅学園文化祭(前編)
「お兄ちゃん、クリーム出来たよ」
「おう!妹子、サンキュ!」
ケーキの仕上げに使うフロマージュブランのクリームを作ってお兄ちゃんに渡した。
10時のオープンに合わせて、お店の商品を揃えていく。
次々に焼き上がるヴィエノワズリーに、タルト、ケーキを仕上げてお店に並べていった。
今日から、焼き芋のタルトが新商品として発売される。
煉獄さんが注文してくれた、あのタルトが、秋の新商品に採用される事になった。
お兄ちゃんと、悲鳴嶼さんと三人で、新作のアイデアを出し合って話し合いの結果、焼き芋のタルトは無事に最終選考を突破した。
嬉しい!自分の考えたお菓子が採用された事も嬉しかったけど、煉獄さんが気に入ってくれたお菓子が、これからしばらくの間、お店のショーケースを飾る事になるのがワクワクする。
タルトの上には赤いチョコレートを飾っていく。
これは煉獄さんをイメージして作ったものだった。
それを本人に伝えた時の、煉獄さんの輝くような笑顔を思い出すと、また胸がふわふわっとなって、一瞬手が止まった。
タルト・オー・パタトゥ・ドゥーズ
このタルトの名前だ。焼き芋のタルトという名前には出来なくて、この名前になった。煉獄さんのタルトは今日、完売してくれるかな?
10時になってお店がオープンした。
早速入って来たお客様が、ショーケースを眺めている。
タルトを見ている…選んでくれるかな…。
私はドキドキしながらお客様の注文を待つ。
「すみません、フラムを1つと、シュークリームを2つ、エクレールショコラを1つと…美味しそう!タルト・オー・パタトゥ・ドゥーズを2つお願いします」
お客様が注文してくれた!二つも!!
……嬉しい!煉獄さんに、つい知らせたくなった。
今日から10月。
少しずつ秋の気配がして来ている。
フラムで働き出してから1か月が過ぎた。
約束の3ヶ月まで、あと2か月だ。
今月は、鬼滅学園文化祭もあるし、何かと忙しくなりそうな予感がしている。
「お昼休憩に行ってきまーす!」
午前中は慌ただしく過ぎて、お昼の休憩時間になった。
エプロンを外して、お財布と携帯だけ持って店を出る。
今日のお昼は何にしよう?最近出来たサンドイッチ屋さんに行ってみようかな。
歩き出しながら、何げなく携帯を見た時、メッセージが入って来た。
煉獄さんだ!