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紅玉の瞳

第5章 距離


「見るな」

顔を背ける不死川
ほのかは彼の袖をひっぱる

「美味しいもの食べさせてくれるんですよね?」
「...あぁ。腹いっぱい食わせてやるよ」
「ふふ、楽しみにしてますね」

照れる不死川を見てほのかは嬉しくなって笑顔になった

「今日も俺んとこ来るか?」
「お邪魔していいんですか?」
「構わねぇよ」

いつものように稽古をする為不死川邸に行くことになった
二人は並んで歩く
その距離は以前よりも少し近く感じた


稽古を終え甘味休憩を取る
今日のおやつは「かすてら」だった

「わぁ!珍しいですね!」
「たまにはいいだろ」

不死川はお盆にかすてらとお茶を乗せて縁側に運んだ

青空の下天気も良く気持ちのいい風が吹く

流した汗を手拭いで拭いてお茶を啜る

一息ついたところでふわふわのかすてらを頂いた

「ふわっふわ!おいしぃ〜」

頬が落ちそうなのを左手で添えて満足そうに頬張る
そんな彼女を見て不死川は穏やかな気持ちになった

「うまいか」
「はい!」

不死川も一口頬張る

「ん、うめぇな」
「ですよねぇ!こんな美味しいものありがとうございます!」
「ほのかが喜ぶならまた準備しとくぜ」
「不死川さんって優しいですよね」

微笑む彼女が愛おしくて
その可愛らしく微笑む頬に触れたくなるが持ち上げた手を引っ込めた

「?どうしました?」
「ん...なんでもねぇよ」

もう一口かすてらを頬張った不死川は庭に視線をずらした

ちらつく煉獄杏寿郎の姿
触れたいけど、触れられない
傷をつけてしまうかもしれない
そう思うと、距離をとってしまう


穏やかな風が吹く
縁側に座っているとうとうととするほのかが隣にいる

「眠いのか」
「ちょっと...」
「昼寝していいぜ」
「そんな、悪いですよ」
「今更、俺に気を遣ってどうする」

「じゃお言葉に甘えて」とこつんと不死川の肩にもたれる

そうくるとは思わなかった不死川はびくっと身体が跳ねたが動けばほのかが寝られない

仕方なくそのままじっとするしかなかった

柔らかな髪が不死川の頬に当たる
石鹸のいい香りが鼻を掠める

ほのかの温もりが伝わってきて居心地がよかった
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