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紅玉の瞳

第5章 距離


今日も今日とて任務に出かけるがここ最近冨岡義勇との任務が多くあった

「おわりましたね」
「あぁ」

話しかけても返事しか返ってこない冨岡との任務は静かなものだった

「お腹すきません?」
「いや」

食事を誘っても断られることもしばしば
ほのかはどうしたら打ち解けてくれるのかと考えていた

「冨岡さん好きな食べ物ってなんですか?」
「鮭大根」
「美味しいですよね」
「...」

返事がない
困ったものだと頭を捻る

冨岡はあの事件のことを知ってか知らずか何も言わずにいつも家まで送ってくれる

「いつもすいません」
「気にするな」
「それでは、おやすみなさい」
「...」

冨岡は黙って去ってしまう

そんな彼の背中を見送るほのか
見えなくなると屋敷に入って行った

湯浴みをして自室へと向かう
一人静かな部屋
一人になるとどうしても杏寿郎との思い出が蘇る
涙することはなくなってきたが、やはり寂しいものだ
目を伏せると浮かび出る今は亡き杏寿郎の笑顔

気づけば眠りについていた


翌朝表へ出ると見覚えのある人影があった

「どうしたんですか?冨岡さん」
「朝飯はまだか」
「まだですね」
「いくぞ」
「は?」

冨岡は説明もなしに歩き始める
訳もわからず後をついていくほのか

「どこに行かれるんです!?」
「...」
「ねぇ!冨岡さん!」

思わず冨岡の手を取り歩みを止めると冨岡が振り向く

「うまい店を知っている」
「うまいって、何がですか?」
「...鮭大根」

それを聞いて少し考えたのち冨岡の行動がみえてきた

「もしかして、冨岡さん私に美味しい鮭大根を食べさせようとしてくれてます?」
「...あぁ」

それを理解してほのかはぱぁっと顔を明るくさせた

「ふふふ、言葉が足りなすぎますよ冨岡さん。でも、ありがとうございます」

笑顔でそんなことを言うほのかに冨岡も少しだけ口角を上げた

店に着くと向かい合って席に着く
鮭大根を注文し暫し待つと湯気をあげたそれがやってきた

「わぁ美味しそう」

静かに手を合わせて鮭を頬張る冨岡はとても満足そうな表情をしていた
そんな彼を見てほのかは微笑ましく思う

「本当に好きなんですね」


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