第1章 満月
煉獄邸に戻り真っ先に湯浴みをしに行く
ぬるくなった湯を浴びて急いで着替える
冷えた体を温めるべく自室の布団を目指した
煉獄杏寿郎の部屋を通り過ぎようとした時部屋の襖が開かれた
「わわっ!びっくりした」
「驚かせてすまない」
驚いたものの声は小さくする
「どうしたの?」
「おいで」
手招きされて杏寿郎の部屋に入る
「湯浴みをしたのだろう。寒かっただろ?」
ほのかは震える体を擦り杏寿郎を見る
「俺の布団に入るといい」
「え、あ、うん」
ほのかは杏寿郎の布団に潜り込む
そこは今まで杏寿郎が入っていたせいでとても温かかった
杏寿郎がほのかを抱く
昔はよく一緒に寝たものだ
その時とは違う胸の鼓動に動揺した
温かい杏寿郎の温もり
ほのかは自然と瞼が重くなる
朝になり日差しで目が覚める
ずっと杏寿郎はほのかを抱きしめていた
「杏寿郎、朝だよ」
すると杏寿郎も瞼を震わせ目を覚ます
「もう少しこうしていたい」
「ん」
強くなる腕の力
抜け出すことができない
暫しの間そうしていた
「杏寿郎、そろそろ起きなきゃ」
「む...そうだな」
そう言って漸く腕から解放された
ほのかは身なりを整えた
まだ心臓がバクバクと鳴っている
「私は先に行ってるから!」
ほのかは早口で言い部屋を出た
残された杏寿郎は彼女が出ていった先を見つめる
腕に残るほのかの華奢で柔らかな感触
杏寿郎自身も胸の鼓動に動揺していた
ほのかは目を覚ます為に顔を洗う
冷たい水が顔を濡らすと目が冴えた
「はぁ〜」
漸く煩い心臓も静まりかけてきた
杏寿郎と寝ることなんて久方ぶりでしかもお互い大人になってからは初めてのこと
それがこんなにも昔と違う気持ちになるとは思わなかった